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高次脳機能障害とは
人間の脳の機能には、呼吸、消化などの生命維持をつかさどる機能のほかに、記憶や判断力を司る高度な機能をもつ機能を高次脳機能があり、これらの高度な機能が脳卒中や交通事故、スポーツ事故などの後に障害された状態(障害)を高次脳機能障害と言います。
高次脳機能障害で最も顕著な症状が認知機能の障害です。認知機能の障害でも「物忘れ」が最も顕著な高次脳機能障害の症状といえます。
高次脳機能障害の患者は全国に50万人いると言われています。
高次脳機能障害の主な症状は
記憶障害(日付が分からない、物の置き場所や自分の居場所、人の名前、予定、自分の行動(言ったこと、行ったこと)が分からない、同じ話を何度もするなど)
注意障害(集中できない、ボンヤリしている、一度に2つ以上の事が出来ない、状況の良し悪しを見極めずに行動する)
遂行機能障害(物事を論理的に考えられない、人に指示してもらわないと物事が出来ない、仕事の段取りが組めない、計画が立てられない)
社会行動障害(自分の感情がコントロール出来ない、過食、無駄遣い、自己中心的な行動、暴力)
その他失語(うまく会話が出来ないなど)、失行(動作がぎこちないなど)、失認(人の顔が判別できないなど)
高次脳機能障害での障害年金の請求
高次脳機能障害の障害認定要領
高次脳機能障害は、症状性を含む器質性精神障害として障害年金の対象となります。
高次脳機能障害の認定要領としては下記のようになります。
1級・・・高度の認知症、高度の人格変化その他の高度の精神神経症状が著名なため常時の介護が必要なもの。
2級・・・認知症、人格変化その他の精神神経症状が著名なため、日常生活が著しい制限を受けるもの。
3級・・・1.認知症、人格変化は著しくないが、その他の精神神経症状があり、労働が制限を受けるもの。
2.認知症のため労働が著しい制限を受けるもの。
障害手当金・・・認知症のため労働が制限を受ける。
障害年金請求のポイント
記憶力の低下
高次脳機能障害での障害年金の請求において「記憶力の低下」が請求のポイントとなります。
日常生活において高次脳機能障害により記憶力が低下したことによって、財布やかばんなど自分の持ち物をどこに置いたのか忘れてしまったり、病院への道順忘れてしまうため1人で通院ができない、処方された薬を飲み忘れる、友人や知人の名前を忘れてしまい交友関係に支障が生じるなどの症状により日常生活に著しい支障が生じた場合には障害年金の対象となります。
診断書における「日常生活能力の判定」
障害年金を請求する場合に最も重要な書類の一つが担当医師が作成する診断書です。
この診断書の中でも裏面の「日常生活能力の判定」が重要な項目となります。
高次脳機能障害での障害年金を請求する場合もこの部分が重要となります。
具体的には
適切な食事・・・配膳などの準備も含めて適量バランスよく摂ることがほぼできる
身辺の清潔保持・・・洗面、洗髪、入浴等の身体の衛生保持や着替え等ができるまた自室の清掃や片付けができる。
金銭管理と買い物・・・金銭を独力で適切に管理しやりくりがほぼできる。また1人で買い物が可能であり、計画的な買い物がほぼできる
通院と服薬・・・規則的に通院や服薬を行い病状等を主治医に伝えることができる。
他人との意思伝達及び対人関係・・・他人の話を聞く自分の意思を相手に伝える、集団行動が行える。
身辺の安全保持及び危機対応・・・事故等の危険から身を守る能力がある。通常と異なる事態となった時に他人に援助を求めるなどを含めて適正に対応することができる。
社会性・・・銀行での金銭の出し入れや公共施設等の利用が1人で可能また社会生活に必要な手続きが行えるなど
これらの項目が高次脳機能障害の「記憶力の低下」をはじめとした症状により「できない」或いは「援助がなければできない」など、どれだけ支障が生じているかが判断(審査)のわかれ目となります。
医師への診断書の依頼
診断書の内容が障害年金の受給の可否を大きく左右するため、担当医師に対する診断書の依頼の仕方が重要となります。
担当医師は診断の合間を縫って忙しい中診断書作成します。このため時として診断書の内容が不十分となる場合があります。
さらに、担当医師は患者と生活をともにしているわけではありませんので、細かい診断書の項目の内容についてすべてを理解している訳ではありません。
これらの医師の障害年金用の診断書を作成する際の「特別な事情」を踏まえて診断書の作成を依頼する際は、事前に診断書の作成依頼を行い、許可を受けてから診断書用紙を渡すことはもちろんですが、現在の病状について担当医師が分かるようにメモ書きを渡すなど工夫する必要があります。
特に「日常生活能力が判定」の部分は重要ですので、この部分についてどのような項目に支障が生じているのかについて担当医して伝える必要があります。
さらに他の項目についても担当医師が知らないことについて書面を事前に作成したり、或いは病歴就労状況等申立書を事前に作成し添付するなどの工夫が必要です。