失業保険は正確には雇用保険の基本手当と言い失業保険(雇用保険)の被保険者が失業した場合に求職活動中の生活を保障するものとして支給されます。
一方で障害年金は疾病(障害)で就労や日常生活に支障が生じた場合に国民年金または厚生年金から支給される年金です。
ではこの失業保険(雇用保険)と障害年金は同時に受給することが可能でしょうか。
目次
原則として失業保険(雇用保険)と障害年金は併給が可能
失業保険(雇用保険)とは
失業保険という呼び方は古い呼び方であり現在は雇用保険と呼ばれています。
失業保険(雇用保険)には基本手当、就職促進給付、教育訓練給付、雇用継続給付の4種類があります。
基本的に失業保険と呼ばれているものは雇用保険の基本手当のことを言います。
失業保険(雇用保険)の基本手当を受給するためには住所地のハローワークに行き求職の申し込みを行い、雇用保険被保険者離職票を提出することで手続きを行うことができます。
失業保険(雇用保険)を受給するためには失業中であり、就職しようとする意志といつでも就職できる能力があるにもかかわらず職業に就けず積極的に求職活動を行っている状態にある必要があります。
また、失業保険(雇用保険)の基本手当を受給するためには失業の認定を受けようとする期間中に原則として2回以上の求職活動を行う必要があります(自己都合の退職の場合には原則として3回以上)、就職困難者は1回。
就労可能証明書
就労可能証明書とは、病気や障害などで退職した人が、再び働ける能力があることを医師が証明するための書類です。特に失業手当(雇用保険の基本手当)を受給する際に重要な役割を果たします。
目的と役割
失業手当(雇用保険の基本手当)の受給要件には「就職する意思と能力があること」が含まれています。
傷病による退職の場合、ハローワークに「就労可能証明書」を提出することで、週20時間以上働ける能力があると認められ、失業手当の受給が可能になります。
医師による証明
この証明書は、医師が診察のうえで「週20時間以上の就労が可能」と判断した場合に発行されます。
フルタイム勤務が難しくても、パートタイムで働ける状態であれば、就労可能とみなされます。
証明書がないと、失業手当の申請が通らない可能性があります。
障害年金と併用して受給する場合にも、この証明書が鍵となることがあります。
就職困難者
失業保険(雇用保険)の就職困難者とは障害者の雇用の促進等に関する法律に規定する身体障害者、精神障害者で市区町村の発行する障害者手帳(精神障害者保健福祉手帳、療育手帳)を取得している方または統合失調症、躁うつ病(躁病、うつ病を含む)またはてんかんに罹っている者のことを言います。
また知的障害者とは児童相談所、知的障害者更生相談所、精神保健福祉センター、精神保健指定医または法第19条の障害者職業センターにより知的障害者であると判定されたものをいうものであり、その確認は求職登録票または療育手帳により行うものとされています。
一方で、精神疾患のために求職活動ができないほどの病状の場合には失業保険の就職困難者には該当しない場合があります。
※この点は非常に微妙な判断となりますのでハローワークの窓口でご相談されることをお勧めいたします。
上記のように求職活動ができないほどの病状の場合には、障害年金を受給することはできますが、同時に失業保険(雇用保険)の基本給付を受給できない場合があります。
就職困難者に該当する主なケース
・障害者手帳を持っている人
・定年退職後の高年齢者(60歳以上)
・母子家庭の母、父子家庭の父
・長期療養後に復職困難な人
・DV被害者や刑務所出所者など、社会的困難を抱える人
給付日数の延長
通常の失業手当の給付日数は90日〜150日程度ですが、就職困難者に認定されると最大で360日まで延長されることがあります。
また休職活動が4週間に2回のところ1回で認められることや常用就職支度手当が就職決定の際に支給されると言ったメリットがあります。
障害年金
障害年金とは
障害年金はご病気や障害などで就労や日常生活に支障が生じた場合に国民年金保険または厚生年金保険から支給される年金で、障害年金の他に老齢年金、遺族年金がありかつては公務員に支給された共済年金があります。
障害年金の受給要件
障害年金の等級
障害年金を受給するためには傷病が障害年金に定めた等級に該当する必要があります。
障害年金の等級には1級から3級と障害手当金の4段階があります(障害基礎年金は1級と2級のみ)。
障害年金の等級は障害認定基準、障害認定要領によって詳しく定められています。
(関連記事:障害年金の等級と受給できる金額について知りたい)
保険料の納付要件
また初診日以前に一定の国民年金保険料を支払っている必要があり未納が多い場合は受給要件を満たさない場合があります(保険料納付要件)。
障害認定日
さらに障害年金は原則として初診日から1年6か月(障害認定日)以後に手続きを開始することが出来ます。場合により5年分の障害年金を遡って受給できる場合もあります(遡及請求)。
失業保険と障害年金は併給が可能
併給調整がある制度
傷病手当金(健康保険から支給)と障害年金、生活保護と障害年金は併給調整があり両方を受給することはできません。
(関連記事:障害年金と傷病手当金について)
(関連記事:障害年金と生活保護を両方受給することはできますか?)
また労災保険の給付と障害年金も調整が行われ障害年金が優先して支給され労災保険は減額して支給されます(二十歳前傷病による障害基礎年金と障害手当金は労災保険の給付が優先します)
(関連記事:労災保険の給付と障害年金の支給調整について教えてください。)
失業保険(雇用保険)と障害年金には併給調整がない
失業保険(雇用保険)と障害年金には60歳から65歳まで支給される特別支給の老齢厚生年金や特別支給の退職共済年金とは異なり併給調整の規定がありませんので原則として併給することができます。
併給が難しくなる場合
併給が難しい場合
失業保険(雇用保険)の基本手当を受給するためには「求職の申し込み」を行う必要があります。
この求職の申し込みの行う際に「就職しようとする意志といつでも就職できる能力がある」必要がありますので例えばうつ病等の精神の疾患で障害年金を受給中の場合で就職できる能力がない(意欲低下などの病状で)と判断された場合には失業保険(雇用保険)の基本手当を受給できない場合があります。
併給可能な場合
一方で例えば車椅子を利用するような下肢の障害で障害年金を受給しているような場合には障害はあるものの「就職しようとする意志といつでも就職できる能力がある場合」に該当しますので、障害年金を受給中であっても求職の申し込みを行い失業保険を受給することが可能となります。
上記の車椅子の例のほかにも心臓の疾患で人工弁を装着 しており障害厚生年金3級を受給している場合やペースメーカー 、ICT を装着している場合、人工股関節の置換術を行っている場合、人工肛門や新膀胱を造設している場合等の場合にも多くの場合「就職しようとする意志といつでも就職できる能力がある場合」に該当するため障害年金を受給中の場合でも求職の申し込みをすることによって失業保険(雇用保険)を受給(併給)することができます。
傷病手当と障害年金の併給
傷病手当とは失業保険(雇用保険)の基本手当の受給資格者が離職後公共職業安定所に出頭 し「求職の申し込み」をした後において疾病や負傷のために継続して15日以上職業に就く事ができなくなったときに基本手当の代わりに支給される手当です。
傷病手当は基本手当の代わりに支給されるものですが、求職の申し込みをした後に障害(疾病や負傷)の状態になった場合に支給されるものです。
求職の申し込みの後に障害(疾病や負傷)の状態になった場合にはこの傷病手当と障害年金を併給することが可能となります。
失業保険の受給期間の延長の制度と障害年金
この場合には失業保険の基本手当の受給期間の延長の制度がありますので最大で3年間受給期間を延長することが可能となります。
この場合には失業保険(雇用保険)の基本給付は受給が延期となりますのでひとまず障害年金を受給しその後に失業保険(雇用保険)の基本給付を受給することとなります。