障害年金の請求書を必要書類とともに提出した場合、通常2ヶ月から4ヶ月ほどで日本年金機構より決定の通知が届きます。
思っていた通りに年金の支給が決定された場合は良いですがそうでない場合もあります。
例えば、遡及請求を行ったにもかかわらず事後重症請求しか認められなかった場合や、障害厚生年金2級を受給できると思っていたにもかかわらず3級になってしまった場合あるいは不支給になってしまった場合には不服申し立てである審査請求を行うことができます。
目次
審査請求について
審査請求できる期限
審査請求には期限が定められています。審査請求は処分のあったことを知った日の翌日から3ヶ月以内に文章または口頭で行わなければなりません。通常、処分を知った日とは年金請求の決定通知が送付された日となります。
審査請求を行う機関
障害年金の審査請求は各地方厚生局の社会保険審査官が行います。社会保険審査官は厚生労働省の公務員で、当該公務員が単独で審査を行います。社会保険審査官は102名在職してると言われています。
審査請求を行うには
審査請求を行うには各都道府県の社会保険審査官に対して障害年金の審査請求を行いたい旨を伝える必要があります。
各都道府県の社会保険審査官は各地方の厚生局に所在しています。
各地方厚生局は全国8ヶ所にあり、北海道の場合は北海道厚生局、東北(青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県)は東北厚生局、関東甲信越(茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、山梨県、長野県)は関東甲信厚生局、東海北陸(富山県、石川県、岐阜県、静岡県、愛知県、三重県)は東海北陸厚生局、近畿(福井県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県)は近畿厚生局、中国四国地方(鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県)は中国四国厚生局また四国(徳島県、香川県、愛媛県、高知県)は四国厚生局、九州(福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県)は九州厚生局と別れています。
自分が住んでいる住所の地方厚生局に電話をかけ、「障害年金の審査請求を行いたい」旨を伝えると社会保険審査官が直接電話口に出てきます。
社会保険審査官はその場で名前と住所を聞いてきますので、その旨を伝えると審査請求書とその他請求方法が記載された説明書が送付されてきます。
審査請求は原則的に送付されてきた審査請求書に必要事項を記載し返送することで終了します。
ただ、行政不服審査法の改正により審査請求の場合でも口頭で意見陳述を行うことができるようになりました。
口頭での意見陳述を行う場合には本人または社会保険労務士などの代理人が指定された期日に出席することで自分の意見を陳述することができます。
審査請求の請求書の書き方
社会保険審査官に障害年金の審査請求を行いたい旨を伝えると数日で、審査請求書が送付されてきます。
審査請求書には年金の給付を受けるべき者の氏名や住所、生年月日のほかに審査請求の趣旨及び理由を記載する欄があります。
審査請求書の記載においてメインとなるのはこの審査請求の趣旨及び理由の欄になります。
審査請求を行う場合にはこの審査請求の趣旨及び理由欄にどのような処分を受けまたなぜ不服申し立てをするのかまたどのような決定をしてもらいたいのかについて記載する必要があります。
通常は障害年金が不支給となった場合はその旨を記載し、自分が受給できる権利があると思う理由と障害基礎年金または障害厚生年金の支給決定をしてもらいたい旨を記載します。
審査請求の理由について「障害年金を受給しなければ現在困窮していて生活が成り立たないこと」や「担当の医師が協力的でなかった」こと或いは「担当の医師が障害年金を受給できると言ってくれた」ことなどは審査請求の理由にはなりません。
障害年金が受給できなかったということは障害年金の受給要件の何かが足りなかったということですから、そのことを穴埋めできる事由がなければ審査請求は認められません。
また診断書について医師が記入内容を誤っている場合にはその旨の意見書を担当医師に作成してもらうことも審査請求の方法の一つですが、担当医師が簡単に自分が作成した診断書の誤りを認めることもそう多くはありません。
審査請求の裁決
審査請求の審査期間は通常の障害年金の審査期間よりも長くかかるのが通常で4ヶ月から6ヶ月ほどかかる場合がほとんどです。
審査請求の決定は、認容、処分の取り消し、棄却、却下があり簡易書留で住所に送付されます。
棄却は審査請求が認められない場合、却下は審査請求が期限内に行われなかった場合などに行われます。
認容は文字通り審査請求が認められた場合に行われます。処分の取り消しは日本年金機構により行われた前回の処分を取り消し審査請求人の請求を認める場合に行われます。
審査請求を行った場合に自分の主張が認められるケースはあまり多くありません。
関東甲信厚生局の資料によると、平成25年度の厚生年金と国民年金についての決定は、2,790件ありましたが、そのうち請求者の主張が認められた件数が90件(3.2%)となっています。
平成26年度は2,576件請求がありそのうち40件(1.55%)が認容されています。
これが平成27年度になると、2,339件の審査請求がありそのうち29件(1.11%)がその主張が認められています。関東甲信厚生局資料による
以上から審査請求が認められるケースが非常に少ないことがわかります。
これは審査請求を行った場合、社会保険審査官が書面審査(一部口頭の意見陳述)をもとに一度行われた決定を再度見直すという審査請求の性質があると思われます。
例えば、審査請求に当たって新しい診断書を担当医に作成してもらい資料として添付した場合もその診断書は審査請求の主要な資料とは認められないことがほとんどであると思われます。それは一度行われた決定を今一度見直すといった審査請求の性質があるからです。
一方で初診日の特定が不十分であるということで障害年金の支給が行われなかった場合などは新たに受診状況等証明書等を提出することができれば審査請求で処分の取り消し(認容)が行われる場合もあります。
審査請求に不服がある場合
再審査請求
審査請求に不服がある場合には、審査請求の決定を知った日の翌日から2ヶ月以内に再審査請求を厚生労働省社会保険審査会に行うことができます。
社会保険審査会は合議制の機関で社会保険審査会に出席し意見を述べることもできます。ただ再審査請求は厚生労働省の本部で行われますので出席時は交通費、宿泊費を自分で支払って出席しなければなりません。
再審査請求の場合は審査請求に比べ請求が認められる確率は高くなり、再審査請求の20%ほどが認められて(認容)います。このことから審査請求を行った場合には再審査請求まで行う事が得策といえます。
訴訟
審査請求の結果に不服がある場合は通常は再審査請求を行いますが、再審査請求を行わず、裁判所に訴訟(行政事件訴訟法等)を行うことも可能です。
訴訟は審査請求の決定の送達を受けた日または再審査請求の裁決の送達を受けた日の翌日から起算して6ヶ月以内に行う事が出来ます。
また以下の場合には審査請求の決定を経なくとも訴訟を行う事が出来ます。
(1)審査請求があった日から2ヶ月を経過しても審査請求の決定がないとき
(2)決定の執行等による著しいが損害を避けるため緊急の必要があるとき
(3)その他正当な理由があるとき
ただ訴訟手続きは再審査請求に比べ複雑で費用もかかるため、通常は再審査請求を行うことになります。