更新日:2023年8月11日
障害年金は、1級、2級、3級、障害手当金と4段階にわかれています。障害年金の金額に関しても、等級が上位になるほど高い金額を受給することができます。ただ障害年金2級と障害年金3級には(受給要件や金額の加算等)大きな違いがあります。どのような点からこのような違いが生じるでしょうか。
目次
障害厚生年金3級
3級があるのは障害厚生年金のみ
障害年金には、1級~3級と障害手当金の4種類がありますが、このうち、3級と障害手当金に関しては、障害厚生年金にのみ認められている等級です。
このことから、障害基礎年金を請求する場合には1級と2級しかありませんので3級以下に該当する障害をお持ちの方は年金を受給できない場合があるということになります。
障害基礎年金と障害厚生年金の違い
決定基準
障害基礎年金と障害厚生年金の違いは初診日に国民年金と厚生年金のどちらの年金に加入していたかで判断されます。初診日は当該ご病気のために初めて医師または歯科医師を受診した日をいいます(病名が決定した日ではありません)。
この初診日の時点で学生であったりまたは自営業を行っていたり、或いはご病気のために仕事をされていない時期に当たり国民年金に加入していたという場合に当該ご病気で障害年金を請求する場合には障害基礎年金となります。
一方で、ご病気となった時点では、会社員で厚生年金に加入していたという場合には、たとえ現在無職で、国民年金に加入している場合でも請求できる年金は、障害厚生年金となります。
このように現在どの年金に加入しているのかではなくて、初診日の時点を基準にどの年金に加入していたか(国民年金か厚生年金(共済年金))で現在請求できる年金が決まります。
年金の金額面での違い
障害基礎年金と障害厚生年金とは受給できる年金額でも違いが生じます。
特に障害基礎年金2級の場合には、高校生以下の子供がいる場合にのみ家族の加算額(加給年金)がつきますが、障害厚生年金2級の場合には、高校生以下の子供だけではなく、配偶者がある場合にも加算額(加給年金)がつきます。このため、障害基礎年金2級と障害厚生年金2級では、金額面でかなりの違いが生じます。
※正確には障害厚生年金2級の場合には障害基礎年金2級の同時に受給することとなり子の加算は障害基礎年金に、配偶者の加算は障害厚生年金2級につく形となります。
障害年金の年金額
【障害基礎年金】
1級 99万3,750円(昭和31年4月2日以後生まれの場合)
2級 79万5,000円(昭和31年4月2日以後生まれの場合)
【障害厚生年金】
1級 報酬比例の年金額×1.25倍+配偶者の加算額(228,700円)
2級 報酬比例の年金額+配偶者の加算額(228,700円)
3級 報酬比例の年金額 ※最低保証額が59万6,3oo円と定められています。
(金額は令和5年度現在)
※配偶者が老齢年金(被保険者期間が20年以上または共済組合等の加入期間を除いた期間が40歳(女性の場合は35歳)以降15年以上の場合に限る)、退職共済年金(組合員期間20年以上)または障害年金を受けられる間は配偶者加算額は支給停止されます。
報酬比例の年金額の計算方法
平均標準報酬月額×7.125/1,000×平成15年3月までの被保険者期間の月数+
平均標準報酬額×5.481/1,000×平成15年4月以後の被保険者期間の月数
障害厚生年金3級に該当する障害の状態とは
障害認定基準
3級
労働に著しい制限を受けるかまたは労働に著しい制限を加えることを必要とする程度のものとする。
また傷病が治らないものにあっては労働が制限を受けるかまたは労働に制限を加えること必要とする程度のものとする。
傷病が治らないものについては、障害手当金に該当する程度の障害の状態がある場合であっても3級に該当する。厚生年金令別表
障害手当金
傷病が治ったものであって労働が制限を受けるかまたは労働に制限を加えることを必要とする程度のものとする。厚生年金令別表
※障害手当金は初診日から5年以内に傷病が治り障害手当金の状態に該当している時に支給されるものです。請求は治った日から5年以内に行なわなければいけません。
障害厚生年金3級の障害の程度は厚生年金令別表で一般的な基準が規定されています。障害認定基準の一般的な規定によれば、労働ができるかどうかという点が重視されています。
障害厚生年金3級に該当するためには労働に支障が生じ、労働ができないまたは著しい支障が生じている程度の障害がある場合に該当します。
3級
1号.両眼の視力が0.1以下に減じたもの
2号.両耳の聴力が40cm 以上では通常の話し声を解することができない程度に減じたもの
3号.そしゃくまたは言語の機能に相当程度の障害を残すもの
4号.脊柱の機能に著しい障害を残すもの
5号.一上肢の三大関節のうち二関節の用を廃したもの
6号.一下肢の三大関節のうちに関節の用を廃したもの
7号.長管状骨に偽関節を残し運動機能に著しい障害を残すもの
8号.一上肢の親指及び人差し指を失ったもの、または親指もしくは人差し指を合わせ一上肢の三指以上を失ったもの
9号.親指及び人差し指を合わせ一上肢の四指の用を廃したもの
10号.一下肢をリスフラン関節以上で失ったもの
11号.両下肢の10趾の用を廃したもの
12号.前各号に挙げるもののほか、身体の機能に労働が著しい制限を受けるかまたは労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの
13号.精神または神経系統に労働が著しい制限を受けるかまたは労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの
14号.傷病が治らないで身体の機能または精神もしくは神経系統に労働が制限を受けるかまたは労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有する者であって厚生労働大臣が定めるもの
厚生年金法施行令
一方で、例えば下肢の障害の場合で1つの下肢がほとんど機能喪失したような場合には、障害厚生年金3級に該当する場合がありますが、この場合には例えフルタイムで就労していたとしても3級に該当します。
人工骨頭また人工関節
また、一下肢の一関節に人工骨董また人工関節を挿入置換した場合には3級に該当します。この場合にも就労しているかどうかということは障害年金の受給に当たって全く問題なりません。
在宅酸素療法
常時在宅酸素療法を施行し常に労働に支障が生じる程度のものは3級となります。
人工弁を装着した場合
人工弁を装着した場合は、障害厚生年金3級に該当します。この場合、複数の人工弁を装着した場合にも原則として3級に該当します。
ペースメーカー、 ICDを装着した場合
難治性不整脈などでペースメーカーまたは ICDを装着した場合は就労の有無にかかわらず3級に該当します。
慢性肝炎
慢性肝炎の場合には原則として障害年金の対象外ですが GOT 、GPT が長期間にわたって100以上の値を示している場合には労働に支障がある場合に限って3級に該当する場合があります。
糖尿病
糖尿病の場合には合併症などの場合を除き障害年金に該当しないケースが多いと思いますが、インスリンを使用しても血糖のコントロールができない程度の糖尿病の場合には3級に認定されます。
また、糖尿病性神経症が長期間継続している場合も3級に認定される場合があります。※平成28年6月より下記の基準により糖尿病の審査が行われています
(1)検査日より前に90日以上継続して必要なインスリン治療を行っていること。
(2)次のいずれかに該当すること
①空腹時のインスリン分泌が枯渇している状態で空腹時または随時の血清ペプチド値が0.3ng/mL未満を示すもの
②意識障害により自己回復ができない重症低血糖の所見が平均して月1回以上あるものを
③インスリン治療中に糖尿病ケトアシドーシスまたは高血糖高浸透圧症候群による入院が年1回以上あるもの。
(3)下記の一般状態区分表の(イ)または(ウ)に該当することを
(イ)軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが歩行、軽労働や座業はできるもの。例えば軽い家事、事務などを
(ウ)歩行や身の回りのことはできるが、ときに少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているものを
人工肛門または新膀胱
人工肛門または新膀胱を造設したものもしくは尿路変更術を施したものは3級と認定されます。
※人工肛門を造設しかつ新膀胱を造設している場合、人工肛門を造設しかつ完全排尿障害(カテーテル留置または自己導尿を施しているもの)状態にある場合には障害年金2級の対象となります。
うつ病等の精神疾患の場合
うつ病の場合
うつ病の場合にはその主な病状が意欲低下にある場合が多く見られます。このため、就労に支障が生じているということがうつ病で障害年金3級を受給するための大きな条件になってきます。
このため、たとえご病気をお持ちの場合でもフルタイムで就労ができているような状態の場合は、障害厚生年金3級に該当しない場合があります。
統合失調症や知的障害など
統合失調症などのうつ病以外の精神の疾患の場合には A型また B型就労支援施設などで就労している場合または一般企業で障害者枠で就労している場合などでも障害厚生年金3級または2級に該当する場合もあります。
うつ病との違いはこれらの病気が必ずしも意欲低下を伴わない場合もあるからです(当然ご病状によっては意欲低下を伴う場合もあります)。
一方で知的障害の場合には初診日が生まれた日(誕生日)となりますので常に障害基礎年金(二十歳前傷病による障害基礎年金)の対象になり障害厚生年金3級の対象にはなりません。
発達障害
就労行っている場合にも障害者枠で働いている場合や A型または B型就労継続支援施設などで就労している場合などには障害厚生年金3級(または2級)に該当する場合があります。
また、一般企業で就労している場合にも上司や同僚の援助のもと就労している場合には、障害厚生年金3級以上に該当する場合があります。
※発達障害の場合には知的障害と同じ先天性のご病気ですが障害年金の手続きに関しましては初診日は原則どおり初めて医師の診断を受けた日となります。
このため初めて医師の診断を受けた日に就労していて厚生年金に加入していた場合には障害厚生年金の対象となる場合があります。
まとめ
・障害厚生年金3級を受給するためにはまず初診日において厚生年金に加入していなければなりません。
このため、自営業や或いは初診日当時無職であったために国民年金に加入中であった場合には、障害の程度が3級の場合には障害年金を受給できない可能性が高くなります。
・障害厚生年金3級は、原則として就労に支障が生じている場合に受給できるものですが、下肢の障害の場合や心疾患の場合の人工弁・ペースメーカーの造設、関節のご病気の場合の人工骨頭の挿入置換などの場合には就労の有無にかかわらず3級に該当します。