目次
綾瀬市の30代女性のADHDによる障害年金の受給事例
結果
障害厚生年金3級決定
ご相談
現在障害者枠で就労しながらクリニックを受診しているとのことでクリニックではADHDと診断されているとのことで綾瀬市にお住いの女性からお問い合わせをお受けしました。
できれば障害年金を受給したいとのことでご相談のお電話をいただきました。
お話を伺ったところ、小中高校とほとんど休まずに学校に通ったが、途中いじめなどにあいまた忘れ物、遅刻が多くあったとのことでした。
保険料の納付状況について確認したところ、ご自身で確認したことはないが多分未納はないのではないかとのことでした。
このことから、さらに詳しくお話を伺うためご面談を実施することとしました。
ご面談
綾瀬市内のご自宅近くのコーヒーショップでお話を伺うこととなりました。
今までの病歴と就労状況等についてお話を伺ったところ、小学校時には通学は行ったものの遅刻や忘れ物が多かったとのことでした。
中学の頃も落ち着きがない、忘れ物や失くし物、遅刻が多く友人はあまりいなかったとのことでした。
その後、高校では就職に役立つ授業を行っている高校に通いましたが、成績は普通だったとのことでした。
さらに専門学校に通い、卒業後パートに着きましたが職場でもミスが多くその後も工場などで就労を継続されましたがここでもミスが多く、感覚過敏で音に敏感、マルチタスクも上手くこなせなかったとのことでした。
現在も障害者枠で就労を継続しているとのことでした。
初めて病院を受診したのは成人した後の現在から15年以上前でその後、病院を4か所ほど転院しているとのことでした。
障害年金の受給要件
初診日の特定
障害年金の手続きを行うためにはまず初めに当該病気の初診日を特定する必要があります。
初診日を特定することで受給できる年金が厚生年金制度からか、国民年金制度からのどちらから受給できるかが初診日を基準に決まります。
初診日の段階で働かれていて厚生年金に加入していた場合は障害厚生年金、国民年金に加入されていた場合は障害基礎年金が支給されます。
また後述の保険料の納付要件も特定された初診日を基準に判断されますのでこのことからもまず初めに初診日が特定される必要があります。
さらに障害年金は障害認定日以降に原則として請求手続きが可能となります。
障害認定日とは初診日を基準に初診日から1年6か月後の日を言います。
この点からも障害年金の請求を行うためにはまず初診日を特定する必要があります。
(関連記事:障害年金における初診日の重要性とその3つの証明方法)
保険料の納付要件
障害年金を受給するためには国民年金保険料の納付要件を満たしている必要があります。障害年金も一般的な入院保険と同じ性質を持っているため事前に一定の保険料を支払ってなければ受給することができません。
原則
初診日の前日において二十歳から初診日の属する月の前々日までの期間の内、保険料納付済期間と保険料免除期間を合算期間が全体の2/3以上である必要があります
特例
特例として初診日の属する月の前々月までの直近の一年間に国民年金保険料の未納がない場合には初診日に65歳未満であることを条件に保険料の納付要件を満たします。
(関連記事:障害年金の保険料納付要件とは)
本件の障害年金受給要件
発達障害の場合には、生来的な病気ではありますが、一般原則通り初めて病院を受診した日が初診日となります。
このため、受診状況等証明書(初診日の証明書)が入手できるかどうかが本件の手続きを行えるかどうかのポイントとなると考えました。
保険料の納付状況について再度確認しましたが特に未納は無いと思うとのことでした。
また初診時の病院について伺いましたが、初診時の病院は今も残っているが、カルテなどの資料が残っているかどうかは確認していないとのことでした。また、受診状況等証明書等の書類が必要な場合はご自身で病院に依頼を行いたいとのことでした。
請求手続き
保険料納付要件
保険料の納付状況について弊所にて確認したところ、所々に未納があるものの保険料の納付要件については問題がないことが分かりました。
また初診時の病院について、弊所で確認したところ、初診時のカルテが残っておりまた受診状況等証明書の作成も了承してもらえました。
遡及請求の可否
遡及請求においては、初診日から1年6ヶ月後の日(障害認定日)から3ヶ月以内に受診していなかったため認定日請求(さかのぼりでの請求)を行うことはできず事後重症請求(請求を行った月の翌月分からの年金を請求)を行うこととなりました。
遡及請求(さかのぼりでの請求)を行った場合、最大で5年間の年金をまとめて受給できる場合があります。
このためできれば遡及請求を行う方が有利であり、まず始めに遡及請求を行えるかどうかを確認していますが、遡及請求を行うためには障害認定日以降3ヶ月以内に受診しており、当時の診断書を入手できなければなりません。
本件のように障害認定日以後3ヶ月以内に受診していない場合はそもそも遡及請求を行うことは原則としてできません。
(関連記事:障害年金の遡及請求(さかのぼりの請求)の6つのポイント)
診断書作成
診断書の作成においてはご面談で伺った内容をもとに詳細に診断書の作成依頼書を作成し、担当医師に診断書の作成を依頼しました。
本件の場合には、現在も就労続けているということから、障害年金を受給するためには就労や日常生活のどの部分に支障が生じているのかについて診断書に的確に記載してもらう必要がありました。
完成した受診状況等証明書と診断書を確認したところ受診状況等証明書に関しては、他の病院(前医)の記載などはなく、初診日の証明として十分な内容となっていました。
また、診断書の内容に関しても、またご病状も感覚過敏があることやマルチタスクが苦手なこと、上司の口頭での指示が理解しづらいこと等の弊所で作成した依頼状の内容を踏まえ、現状を反映したものとなっていました。
このため、弊所で病歴・就労状況等申立書その他の書類を作成し、手続きを完了しました。
病歴・就労状況等申立書に関しては、発達障害の場合、生来的な病気であるため、生まれた時からの状況を記載しなければならないためボリュームが通常よりも多くなりました。
障害年金と就労
障害年金の審査において就労状況は重要な審査対象です。
身体の障害や眼の障害、人工関節、人工透析等は他の基準がありますので就労していても障害年金の受給にあまり影響しません。
一方で精神のご病気の場合は就労状況は重要な審査対象です。
特に就労時の支援、援助の程度、勤務時間、勤務体系等の内容が特に近時綿密に審査される傾向にあります。
本件は障害者枠での就労で上司や同僚の支援を受けて勤務時間も配慮を受けていたため障害厚生年金3級に認定されました。
請求のポイント
発達障害は生来的な病気ではありますが、初診日は一般原則通り初めて病院を受診した日となります。
本件の場合、現在から15年以上前の初診でしたが、病院が残っており、カルテも残っていたため受診状況等証明書を問題なく取得することができました。
また、断続的に就労を行っており、現在も障害者枠で就労行っていましたが、発達障害の場合には、他者とのコミュニケーションが難しく社会性が劣っている場合があるという特徴があり、またミスが多く就労に支障が生じる点が多いなど点から就労(障害者枠)は行っているものの、障害年金を受給することが可能となりました。
※本件の受給事例は個人情報保護法の趣旨に沿って文章を作成しています。