精神の障害(うつ病、統合失調症、知的障害など)で障害年金を受給するための受給要件は大きく3つに分けて初診日の特定、保険料の納付要件、病状があります。
目次
初診日の特定
時間が経つほど難しくなる
精神の障害で障害年金を受給する場合の要件の一つである初診日の特定とはその病気で初めて病院を受診した日をカルテ(またはそれに準ずるもの)に基づいて証明することができるかどうかということです。
最初(初診日)から現在まで同じ病院を受診している場合にはカルテはほとんどの場合残っていますので、そのカルテに基づいて初診日を証明することができます(この場合は診断書に初診日を記載)。
一方で、今までに幾つも病院を受診している場合には5年以上経過していると病院のカルテが廃棄されていたり廃院していることがありこのような場合には初診日を特定することは難しくなります。
うつ病の初診日の特定
うつ病の初診日はうつ病と診断された日ではなく、うつ病によって不眠や倦怠感など初期の症状が出て初めて内科など受診した場合はその日が初診日となります。
またうつ病の前に神経症などで受診していた場合には神経症で初めて病院を受診した日が初診日となります。この場合、うつ病と神経症では病名が異なりますがこの場合でも神経症で初めて病院を受診した日が初診日となります。
知的障害の初診日の特定
知的障害は生来的な病気のため初診日は便宜的に生まれた日となります。このため診断書などに初診日を記載する場合には誕生日を記載することになります。
知的障害に関しては、初診日の証明は不要ですのでこの点に関しては手続きがスムーズに進む部分と言えます。
また、医師によっては「初診日が誕生日となるのはおかしい」と仰る方も稀にいらっしゃいますが勉強不足と言えます。
もっと詳しく⇒障害年金の請求で初診日がわからない場合
保険料納付要件
初診日の前日において、初診日の月の前々月までの被保険者期間がある場合は当該被保険者期間の3分2以上の保険料を納付しているかまたは、初診日の前々月までの直近の1年間に保険料の滞納がない場合に保険料の納付要件を満たします。
保険料の納付要件を満たしている場合には、障害年金を受給できる可能性がありますが、満たしていない場合には少なくとも当該ご病気では障害年金を受給することはできません。
初診日の前日に基準が置かれている理由は障害年金も一般の保険と同じですので病気になって入院した後に入院保険の保険料を払っても保険料が貰えないのと同じことです。
原則として被保険者期間の3分の2以上の保険料を払っていることが必要ですが、特例として直近の1年間滞納がなければ障害年金の受給要件を満たすことになります。
このことから、被保険者期間のほとんどの期間保険料払っていなかったとしても、直近の1年間だけ保険料をすべて払っていれば保険料の納付要件が満たされ障害年金を受給することができます。
例えば、初診日が7月にある場合にはその前々月の6月から前年の7月まですべての保険料を払っている場合には、この要件を満たします。
※初診日が含まれる月の前々月が基準となる理由は年金の保険料は翌月の末日までに支払わなければならないルールになっていますので、初診日の時点で払っていなければならない保険料は前々月の保険料になるからです(前々月までの保険料を全て払っているということは初診日の時点で滞納はないということになります)。
また保険料の免除(若年者納付猶予や学生納付特例を含む)を受けていた場合にも保険料を払っていたものとみなされます(初診日以前に免除の手続きが済んでいる場合)。
病状(障害の状態)
精神の病気で障害年金の受給要件を満たすためには一定の障害の状態にあることが必要です。
障害の状態は1級~3級と障害手当金の4段階にわかれています。
3級と障害手当金は障害厚生年金にのみ認められ、障害基礎年金(初診日において国民年金加入者)は1級と2級があります。
1級・・・精神の障害によって日常の生活を1人で起こることができない場合
2級・・・日常生活に著しい支障が生じ、家族などの介助が必要な場合
3級・・・精神の障害により、労働に制限を受けるか労働ができない場合
精神の病気での障害年金の受給の可否の判断は就労にどれだけ支障が生じているかまた日常生活にどれだけ支障が生じているかという観点からなされます。
日常生活にどれだけ支障が生じているかという点は主に以下の点で判断されます
適切な食事・・・配膳などの準備も含めて適量をバランスよく摂ることができるかどうか。
身辺の清潔保持・・・洗面、洗髪、入浴等の身体の衛生保持や着替え等ができるかどうか。また自室の清掃や片付けができるかどうか。
金銭管理と買い物・・・金銭を独力で適切に管理しやりくりができるかどうか。また1人で買い物が可能か計画的な買い物ができるかどうか
通院と服薬・・・規則的に通院や服薬を行い病状を主治医に伝えることができるかどうか。
他人との意思伝達・・・他人の話を聞く、自分の意思を相手に伝える、集団的行動を行えるかどうか。
身辺の安全保持及び危機対応・・・事故等の危険から身を守る能力があるかどうか。通常と異なる事態となった時に他人に援助求める等を含めて適正に対応することができるかどうか。
社会性・・・銀行では金銭の出し入れや公共施設等の利用が1人で可能かどうか。また社会生活に必要な手続きが行えるかどうか。
うつ病の場合にはその病気の特徴から、意欲の低下や不眠、その他の身体的症状、希死念慮、入院の有無などから判断されます。
統合失調症の場合には幻聴、被害妄想、入院の有無などの病状が判断材料とされます。
まとめ
精神の病気での障害年金の受給要件は原則として初診日の特定、保険料の納付要件、そして障害等級に該当する病状の三つの要件を満たす必要があります。
また一方で、障害等級に該当する病状をとしては就労にどれだけ支障が生じているかまた日常生活にどれだけ支障が生じているかという観点から判断がなされます。