がんにより障害年金を請求する場合にも担当医師が作成する診断書は最も重要な書類といえます。
ここでは、がんにより障害年金を請求する場合の診断書の作成のポイントを解説します。
目次
診断書の作成のポイント
診断書用紙
がんにより障害年金を請求する場合の診断書は、「その他の障害(様式第120の7)」の診断書用紙を用います。
舌がん、喉頭がんの場合は「そしゃく嚥下・言語の障害用(様式第120号の2)の診断書を用いる場合があります。
また、がんが併発、転移している場合はその他各障害の診断書を複数用いる場合もあります。
作成のポイント
がんにより障害年金を請求する場合、就労や日常生活にどれだけ支障が生じているのかといった観点から診査が行われます。
このことから現在の病状を具体的に担当医師に記載してもらうとともに血液検査等の成績がある場合にはそれらの結果についても漏れなく記載してもらう必要があります。
医師は診断の合間を縫って障害年金用の診断書を作成します。
このことから、診断書の記載内容について事実と異なる記載や記載間に矛盾が生じてしまうような記載を行ってしまう場合もあります。
また、医師は患者の病状をすべて正確に理解していない場合がありますので、場合によっては現状よりも軽く診断書を作成してしまう場合があります。
さらに医師は一度作成した診断書の内容を変更しない傾向にありますので診断書を依頼する段階で病状(自覚症状等)について明確に担当医師に伝える必要があります。
診断書の各欄の記載
⑧診断作成医療機関における初診時所見欄の記載
初診時の所見について担当医師に記載してもらいます。
初診時の所見については、専門の医師でなければ分からない部分もありますので、担当医師に記載を任せなければならない部分ともいえます。
一方で、明確な誤り等がある場合には作成後に担当医師に修正を依頼する必要があります。
⑨現在までの治療の内容、期間、経過その他の参考となる事項欄の記載
手術を行ったか、手術を行う前か、手術を行った場合には原発巣を切除したか、リンパ節に転移はあるか、リンパ節を切除したか、遠隔転移があるか、播種があるか、手術を行わず放射線治療やその他化学療法を行っているか、緩和病棟で治療を受けているかなどについて記載する必要があります。
手術歴の欄には主な手術の手術名と年月日について記載します。
⑩現在の症状その他参考となる事項
現在の病状について全身状態、全身衰弱、倦怠感、手足のしびれ、食欲不振などの症状について化学療法による副作用を含めて記載する必要があります。
⑫一般状態区分表
ア.無症状で社会生活ができ、制限を受けることなく発病前と同等に振舞えるもの。
イ.軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、軽労働や座業はできるもの。例えば、軽い家事・事務など
ウ.歩行や身の回りのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが日中の50%以上は起居しているもの。
エ.身の回りのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で日中の50%以上は就床しており自力では屋外へ外出等がほぼ不可能となったもの
オ.身の回りのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ活動の範囲が概ねベット周辺に限られるもの
上記の一般状態区分表はア~オの5段階で病状を判定する形となっています。
担当医師がア~オに〇をすることになりますがこの判断は、がんによる障害年金の受給の可否を大きく左右するといえます。
当該欄は現在の病状を端的に判断される記載欄の為「一般状態区分の欄」診査においては重視される傾向にあります。
アに〇がされた場合は障害年金を受給することは出来ません。
イに〇がされた場合は3級に該当する可能性があります。2級に認定される可能性は低くなります。
ウに〇がされた場合は2級または3級に認定される可能性があります。
エに〇がされた場合は2級に認定される可能性があります。
オに〇がされた場合は1級に認定される可能性があります。
⑮その他の障害欄
がんによる診断書の作成を行う場合は⑮その他の障害欄に症状を記載することになります。
この欄には症状として自覚症状、他覚症状また検査成績の記載欄がありますので、それぞれ必要な事項について記載する必要があります。
自覚症状は主にご自身で感じている病状について記載する欄であり、他覚症状は主治医をはじめとする第三者が客観的に知る事が出来る症状を記載することになります。
⑯現症時の日常生活能力及び労働能力
障害年金の申請においては労働にどれだけ支障が生じているのか日常生活にどれだけ支障が生じているのかと言った観点から診査が行われます。
このことから当該欄の記載は重要な意味を持つといえます。
労働が行えず、日常生活にも著しく支障が生じている場合はその点について簡潔に記載してもらう必要があります。
労働が行えないにもかかわらず「軽労働は可」などと記載されている場合には、障害年金の受給が認められなくなる場合があります。
⑰予後欄
予後の欄には今後の回復可能性について記載します。障害年金は現時より1年前から今後1年後の病状を診査の対象とすると言われています。
このことから、予後が悪化傾向にある場合にはその旨を記載する必要があります。
診断書作成後の注意点
診断書完成後の確認
診断書が完成した際は必ず内容を確認するようにしましょう。
前述のように医師は忙しい合間を縫って診断書を作成することから、記述間に矛盾が生じる場合や記載漏れ、或いは、事実と異なる記載や現状よりも軽い病状を記載してしまう場合もあります。
これらの記載をそのままにして提出してしまった場合、本来受給できるはずの障害年金を受給できなくなる恐れもあります。
このことから完成後は必ず内容を確認し誤った記載や現状を反映していない記載に関しては、必ず担当医師に相談し、記載の変更や修正を依頼するようにしましょう
他の書類との整合性
障害年金の手続きを行う場合は診断書以外にも病歴就労状況等申立書や受診状況等証明書(初診日の証明書)、その他必要書類の提出が必要となります。
これらの書類間の記載に矛盾がある場合は手続きの途中で書類の修正を求められたり、場合によっては診査の結果受給が認められなくなる場合もあります。
この事から診断書とその他の書類の内容に矛盾が生じない(整合性)ように注意する必要があります。