くも膜下出血はくも膜の下の脳脊髄液に出血する50代から60代に多く発症する疾病で、男女差は女性の発症が男性よりも倍近く多く発症すると言われています。
くも膜下出血により肢体に障害が残った場合には障害年金の受給が可能です。
目次
くも膜下出血とは
症状
突然の強い頭痛とともに吐き気や嘔吐などの症状が起こりその症状が数日の間継続します。
原因
くも膜下出血の原因には脳動脈瘤の破裂や脳動静脈奇形の破裂の他、頭部に強い衝撃を受けたことによる出血などが原因となります。
くも膜下出血による障害年金の受給
くも膜下出血により障害年金を受給するためには初診日の特定、初診日を基準にして保険料の納付要件を満たしていることと、病状が障害認定基準に定められた等級に該当している必要があります(受給資格)。
初診日の特定
初診日とは
障害年金の手続きにおいて、初診日とは当該疾病によって初めて医師の診察を受けた日を言います。
一般的には初診日は初診日の病院のカルテに基づいて作成される受診状況等証明書(初診日の証明書)によって特定を行います。
初診日の特定方法
一方で初診日から長期間経過してしまいカルテが廃棄されてしまっていたり病院自体が廃院しているような場合には、カルテに代わる客観的資料(診察券、レシート、健康保険の記録、救急搬送時の記録など)によって初診日を特定するかまたは2番目、3番目に受診した病院のカルテの記載により初診日を特定する必要があります。
保険料の納付要件
くも膜下出血により障害年金を受給するためには保険料の納付要件を満たしている必要があります。
障害年金は一般の入院保険と同じ性質を持っていますので、事前に保険金(保険料)を支払っていない場合には、障害年金を受給することができません。
保険料の納付要件を満たすためには初診日のある月の前々月までの被保険者期間の3分の2以上の国民年金保険料を支払っている(免除受けている)か65歳未満の場合で直近の1年間に国民年金保険料の未納がない必要があります。
障害認定基準に該当する病状
障害年金を受給するためには定められた障害認定基準に該当する病状である必要があります。
くも膜下出血の場合には肢体の麻痺が生じる場合があり、これらの場合には肢体の障害として障害年金を受給できる可能性があります。
障害認定基準
1級・・・身の周りのことは辛うじてできるが、それ以上の活動をできないものまた行ってはいけないもの。
すなわち病院内の生活でいえば活動の範囲が概ねベッド周辺に限られるものであり、家庭内の生活でいえば活動の範囲が概ね就床室内に限られるものである。
2級・・・家庭内の極めてを温和な活動(軽食作り・下着程度の洗濯等)はできるが、それ以上の活動はできないものまた行ってはいけないもの。
すなわち病院内の生活で言えば、活動の範囲が概ね病棟内に限られるものであり、家庭内の生活で言えば活動の範囲が概ね家屋内に限られるものである。
3級・・・労働が著しい制限を受けるかまたは労働に著しい制限を加えることを必要とする程度のものとする。
「傷病が治らないもの」にあっては労働が制限を受けるかまたは労働に制限を加えることを必要とする程度のものとする。
(「傷病が治らないもの」については、障害手当金に該当する程度の障害の状態がある場合であっても3級に該当する)。
障害手当金・・・「傷病が治ったもの」であって労働が制限を受けるかまたは労働に制限を加えることを必要とする程度のものとする。 国民年金令・厚生年金令別表
※「傷病が治ったもの」とは全快したという意味ではなく、今後治療を行っても改善の見込みのない病状を言います。
担当医師による診断書の作成
診断書の依頼
障害年金の手続きにおいて担当医師が作成する診断書は最も重要な書類です。
このため、担当医師に診断書の作成依頼を行う場合には、現在の病状を担当医師に明確に理解してもらえるようにする必要があります。
このため、口頭で明確に伝えることが難しい場合は、現在の病状を書面にまとめ、それを医師に渡すなどの工夫をする必要があります。
また診断書が完成した後は、現在の病状を反映した内容となっているかどうか診断書の内容を確認する必要があります。
診断書の内容
くも膜下出血により肢体に障害が残ってしまった場合には「肢体の障害用の診断書・様式第120号の3」の用紙を使用します。
⑪欄「麻痺」には麻痺が残っている部分について斜線を記載します。
⑯欄には関節可動域及び筋力を記載します。
⑱「日常生活における動作の障害の程度」欄の記載は大変重要な記載項目といえます。
場合によってはこの項目一つによって障害年金が受給できるかどうかが決まってしまう場合もあります。
記載は上肢下肢の各動作について「〇・〇△・△×・×」の4段階で判定をする形となっています。
医師に診断書の作成依頼を行う場合には、一つ一つの動作について出来ない動作については、明確に医師に伝え、診断書に記載してもらうようにすることが重要です。
またこの記載欄は補助用具を「使用しない病状」を記載するものですので注意が必要です。
時として担当医師は補助用具を「使用した病状」を記載してしまう場合があるからです。
⑲「補助用具の使用状況」欄は杖や車いすなどの使用している補助用具と使用状況を詳細に記載します。
㉑「現症時の日常生活活動能力及び労働能力」欄にはくも膜下出血により日常生活や就労にいかに支障が生じているのかといった点について必ず記載しなければなりません。
㉒「予後」欄には今後治療を継続した場合の回復可能性について必ず記載します。
病歴就労状況等申立書の作成
病歴就労状況等申立書は必要書類の中で診断書に次いで重要な自身で作成しなければならない書類です。
病歴就労状況等申立書は発病から現在までの様子を網羅的に記載する書類です。
診断書は、その時、その時の病状を記載するいわば「点」の役割を果たす一方、病歴就労状況等申立書は診断書の「点」と「点」を結ぶ「線」の役割を果たします。
くも膜下出血により申立書を記載する際は、発病時の様子(緊急搬送時の様子)、通院期間、受診回数、入院期間、治療経過、医師から指示された事項、転院・受診中止の理由、日常生活状況、就労状況等について記載する必要があります。