目次
ガイドラインとは
かつては精神の障害の障害基礎年金の診査の結果において都道府県間格差があり、ある都道府県では障害基礎年金の2級に認定されたものが同じような診断書の内容や病状でも他の都道府県では不支給となってしまうといった事例がありました。
このような地域間格差を是正するために厚生労働省において専門家検討会を平成27年3月に設置し、平成28年9月以降に精神の障害年金の診査において適用される基準を設けました。
この基準を「精神の障害にかかる等級判定のガイドライン」といます。
障害等級の目安
精神の障害にかかる等級判定のガイドラインにおいて特に注目すべき点は障害等級の目安が定められた点です(てんかんを除く)。
※てんかんには発作の回数など特化した認定基準が設けられています。
この障害等級の目安は精神の障害用の診断書の裏面の「日常生活能力の判定」と「日常生活能力の程度」の各チェック項目の数値を一定の範囲で1級から3級に分け等級判断の目安として定めています。
かつても障害年金の手続きに取り組む社会保険労務士の中では暗黙のうちに一定の基準(認識)がありましたが今回のガイドラインでは一定の基準となる目安が定められています。
判定平均\程度 | (5) | (4) | (3) | (2) | (1) |
3.5以上 | 1級 | 1級又は2級 | |||
3.0以上3.5未満 | 1級又は2級 | 2級 | 2級 | ||
2.5以上3.0未満 | 2級 | 2級又は3級 | |||
2.0以上2.5未満 | 2級 | 2級又は3級 | 3級又は3級非該当 | ||
1.5以上2.0未満 | 3級 | 3級又は3級非該当 | |||
1.5未満 | 3級非該当 | 3級非該当 |
《表の見方》
1.「程度」は診断書の記載項目である「日常生活能力の程度」の5段階評価を指す。
2.「判定平均」は診断書の記載項目である「日常生活能力の判定」の4段階評価について程度の軽い方から1~4の数字に置き換えその平均を算出したものである。
3.表内の「3級」は障害基礎年金を認定する場合には「2級非該当」と置き換えることとする。
《留意事項》
障害等級の目安は総合評価時の参考とするが、個々の等級判定は診断書等に記載される他の要素も含めて総合的に評価されるものであり、目安と異なる認定結果となることもありうることに留意して用いること。
ガイドラインが定められて
ガイドラインが定められたメリット
ガイドラインが定められる以前は各都道府県の事務センターによりそれぞれの基準により、認定が行われていたため、都道府県間に認定結果のバラツキが生じ障害年金の請求を行った方々に不公平、不平等が生じていました。
今回ガイドラインが定められたことにより、一定の基準が全国的に統一されたことにより、都道府県間の認定についての不公平、不平等は一定の範囲で解消されるものと思われます。
さらに平成29年4月から障害年金の認定が厚生労働省(東京都)の事務センターで統一して行われるようになったため請求間の格差はほとんどなくなるものと思われます。
障害等級の目安と総合評価
精神のご病気による障害年金の診査においてはガイドラインによる目安一つの基準とし、総合評価が行われるとガイドラインには記載されています。
このことから、ガイドラインに定められた目安のほか、診断書の他の記載事項やその他提出書類のすべてを総合評価することで障害年金の診査が行われます。
更新時(障害状態確認届提出時)のガイドラインの影響
有期認定となった場合には1年から5年の範囲で障害状態確認届(診断書)を提出する必要があります。その時点で、今回のガイドラインがどのように影響するについては以下のような記載がガイドラインにあります。
ガイドライン施行後の再認定にあたっては、提出された障害状態確認届(診断書)の記載内容から下位等級への変更や2級(または3級)非該当への変更を検討する場合は、前回認定時の障害状態確認届(診断書)や照会書類等から認定内容を確認するとともに受給者や家族、診断書作成医への照会を行うなど、認定に必要な情報収集を適宜を行い、慎重に審査を行うよう留意する。
また、不支給後の再請求や、支給停止事由消滅届の提出時については、下記のような記載があります。
ガイドライン施行前の障害年金請求で不支給となった者や再認定によって減額改定や支給停止となった者等からガイドライン施行後、新たに障害年金請求や額改定請求、支給停止事由消滅の届けがあった場合にはガイドラインを用いて等級判定を行う。
(ガイドライン施行前の障害年金請求等に係る障害の程度の認定は障害認定基準に基づき適正な手続きの下で決定だっされたものであることから一律にガイドラインに当てはめた再審査は行わない)。
以上、ガイドラインの内容から今後の障害年金の診査においては診査が今までに比べ厳しくなると言うことよりも都道府県間の格差がなくなり今迄に比し診査基準が明確化されたものと評価する事が出来ます。