目次
てんかんとは
てんかんは、脳の神経細胞に突然発生する電気信号(発射)をによって生じる大脳の異常(脳波異常)な興奮によって発作が生じる病気です。
大人から子供まですべての年齢層において発症する病気で薬を飲まなくとも自然に治るものから薬を飲んでも症状が抑えられないものまであります。
てんかんの患者のうち約80%は薬を飲むことで発作を抑えられるてんかんで残りの20%が薬を飲んでも発作を抑えることができないてんかん(難治性てんかん)です。
障害年金の対象となるのは薬を飲んでも症状が抑えられない難治性てんかんに限られます。
てんかんの障害認定基準
1級・・・十分な治療にかかわらず、てんかん性発作のAまたは Bが月に1回以上あり、かつ常時介護が必要なもの。
2級・・・十分な治療にかかわらず、てんかん性発作の A または B が年に2回以上もしくは C または D が月に1回以上あり、かつ日常生活が著しい制限を受けるもの。
3級・・・十分な治療にかかわらず、てんかん性発作の A または B が年に2回未満もしくは C または D が月に1回未満ありかつ労働が制限を受けるもの。
【発作のタイプ】
A・・・意識障害を呈し状況にそぐわない行動を示す発作
B・・・ 意識障害の有無を問わず転倒する発作
C・・・意識を失い行為が途絶するが倒れない発作
D ・・・意識障害はないが随意運動が失われる発作
てんかんによる障害年金の認定の基本
てんかん発作は部分発作、全般発作、未分類てんかん発作などに分類されますが具体的に出現する臨床症状は多彩です。
また発作頻度に関しても薬物療法によって完全に消失するものから難治性てんかんと呼ばれる発作の抑制できないものまで様々です。
さらにてんかん発作はその重症度や発作頻度以外に発作間欠期においてもそれに起因する様々な程度の精神神経症状や認知障害などが時として出現する可能性があることに留意する必要があります。
てんかんによる障害年金請求のポイント
てんかんによる障害年金の請求においては他の精神のご病気と同じに労働にどれだけ支障が生じているかまた日常生活にどれだけ支障が生じているかという点は重視されます。
ただ一方で、てんかんの場合は発作の頻度とその重症度(意識障害・転倒・意にそぐわない行動など)も同時に重視されます。
このことから、診断書を依頼する際や、病歴・就労状況等申立書を作成する際には、これらの病状をもれなく詳細に記載する必要があります。
診断書作成依頼時の注意点
てんかんに対する障害年金の認定においては上記の発作のタイプや頻度が重要になってきます。
このため、診断書(精神の障害用)を担当医に依頼する場合にもその部分に関して実態とかけ離れた記載とならないように注意する必要があります。
担当医師は患者と一緒に生活しているわけではありませんので発作の頻度や転倒の危険性などについて必ずしも理解しているとは限りません。
このことから、診断書を依頼する際は、その点に関して担当医師に詳しく説明することが重要です。
埼玉県の50代女性の障害基礎年金2級の受給事例
結果
障害基礎年金2級決定
年金額 772,800円
ご相談
現在、てんかんで病院を受診しているとのことでご相談のお電話をいただきました。
ご病状について伺ったところ、月1回~2回のてんかん発作があり発作のため転倒して骨折してしまったこともあるとのことでした。
初診時のことについて伺ったところ、初めて病院を受診したのが現在から20年以上前とのことで病院自体はあるものの、病院にカルテが残っているかどうかは分からないとのことでした。
このことから詳細にお話を伺うためご面談を実施することとなりました。
ご面談
ご病気のため外出が難しいとのことでご自宅でのご面談を実施することとなりました。
発症日から現在までの様子を詳しく伺ったところ、中学校の頃、疲労感、頭痛などの症状がありその後数分間意識をなくして倒れてしまったとのことでした。
その後も脱力感があり最寄りの病院を受診したとのことでした。受診の結果、てんかんの疑いがあると診断されたとのことでした。
その後、3日に1回ほどの頻度で意識を失う発作が生じたため初診時の病院の紹介を受けて大きな病院に転院することとなりました。
転院後、精密検査を受けましたが経過観察となりました。
その後も月に1回ほど意識を失う発作があるため、家族の介助が不可欠となってしまったとのことでした。
その後病状の回復がなかったため病院を転院したとのことでした。また現在から7年ほど前に1ヶ月ほど入院したものの病状はあまり改善せず発作の際に転倒して骨折してしまったとのことでした。
この間、就労を行うことができず常時家族の介助が欠かせないとのことでした。
初診時の病院のカルテについて今一度確認したところ、ご本人が病院に確認されており、カルテが残っていないことが判明していました。このことから、弊所にて二番目以降に受診した病院についてカルテの有無を確認することとなりました。
また、現在の病状記載した診断書の作成を担当医師に依頼する際に弊所で作成した依頼状を診断書用紙に添付することとしました。特にてんかんの発作が月1回程度発症しているため、この点についても診断書に明確に記載してもらうこととしました。
請求手続き
2番目以降に受診した病院にカルテの有無を確認したところ、2番目及び3番目に受診した病院にカルテが残っていることが判りました。
また、二番目に受診した病院には初診病院からの紹介状が残っていることも判りました。
このことから、念のために二番目の病院及び三番目の病院に受診状況等証明書(初診日が証明書)の作成依頼を行いました。
また二番目の病院には紹介状の写しも添付してもらうこととしました。その後、完成した受診状況等証明書の内容を確認したところ、紹介状及び受診状況等証明書には初診日の記載がありませんでした。
このため、二番目の病院の受診日がご本人の未成年時でしたので二十歳になる前に初診日があることは明白でしたが、日付を特定することはできませんでした。
このため、ご本人に確認し念のため初診日に関する第三者からの申立書を当時の状況をご存知の方お2人に作成してもらうこととしました。
その後、完成した現在の病状を記載した診断書の内容を確認したところ、発作の回数など現在の病状を反映したものとなっていました。
また病歴就労状況等申立書に関しては、ご面談時に伺った内容をもとに弊所にて作成しました。
また初診日に関する第三者からの申立書が完成したため、その他の書類とともに提出することで手続きを完了し数ヶ月後に障害基礎年金2級の決定を受けることができました。
請求手続きのポイント
初診日の特定は障害年金を請求する上で避けては通れない重要な作業です。
一般的には初診日の特定は初診日の病院に受診状況等証明書を作成してもらうことで行います。
一方で初診日の病院にカルテが残っていない場合には、その他の方法で初診日を特定する必要があります。
本件の場合には2番目の病院にカルテ及び初診日の病院からの紹介状が残っていたものの、初診の日付を特定することができませんでした。
20歳前に初診日がある20歳前傷病による障害基礎年金の場合には初診日が20歳前にあることが判れば障害年金の審査を通る可能性がありますが本件の場合は念のために初診日に関する第三者の申立書を同時に提出することで確実に障害年金の受給決定を受けることができました。
また、てんかんによる障害年金の請求を行う場合には一定の発作の回数が障害年金の受給の有無を左右することとなります。このことから、診断書には発作の回数を明確に記載する必要があります。
本件の場合にも弊所で作成した依頼状にその旨を明確に記載し担当医師に伝えることで現在のご病状を反映した診断書を入手することが可能となり、障害基礎年金2級の受給決定を受けることができました。
※本件受給事例は個人情報保護法の趣旨に則り文章の内容を作成しています。
まとめ
てんかんによる障害年金の請求においては、薬で症状を抑えることができるてんかんの場合には障害年金を受給することはできません。
一方で、薬で症状を抑えることができない難治性のてんかんの場合には障害年金を受給できる可能性があります。
障害年金を請求する際には、発作の頻度やその重症度を診断書に反映してもらうことが重要ですので、担当医師に実生活での発作の状態を詳しく伝えることが大切です。