脳脊髄液減少症(脳脊髄液漏出症)はその病状により障害年金の受給が可能な傷病です。
かつては脊髄液は漏れることはないと考えられていましたが平塚共済病院脳神経外科部長であった篠永正道医師が脊髄液が漏れ出てしまうことを発見し学会で発表されました。
障害年金請求クリアにも篠永医師の診断を受けた依頼者の依頼を受け障害年金の受給に至った事例があります。
脳脊髄液減少症により障害年金の受給のためのポイントについてご説明いたします。
目次
脳脊髄液減少症とは
症状
頸部痛、起立性頭痛、全身倦怠、頭痛、視力低下、聴力低下、めまい、易疲労性、吐き気、耳鳴り、歩行障害、上肢の痺れなどの症状があり症状は多岐に渡ります。
頭痛、めまいなどの症状は座位、起立位の状態でその症状が強く現れ、横になると症状が軽減する特徴があります。
原因
交通事故などが原因で頸部が損傷しそのことが原因で脳脊髄液が漏れ出してしまうことで生じる病気です。
むち打ち症との関係が指摘されることもありますが因果関係は不明です。
脳脊髄液減少症による障害年金の受給
脳脊髄液減少症により障害年金を受給するためには、障害年金の受給要件を満たす必要があります(受給資格)。
障害年金の受給要件を満たすためには初診日の特定を行い、特定された初診日を基準に保険料の納付要件を満たし、さらに、病状が障害認定基準の等級に該当する病状である必要があります。
初診日の特定
初診日の特定方法
脳脊髄液減少症により障害年金を受給するためには初診日を特定する必要があります。
初診日とは脳脊髄液減少症により初めて医師の診断を受けた日を言います。
症状が出て初めて病院を受診した日であり、脳脊髄液減少症と診断された日(病名が決定した日)ではありません。
一般的には初診時の病院のカルテに基づいて受診状況等証明書(初診日の証明書)を作成することで初診日の特定を行います。
一方で、初診日から長期間経過してしまった場合にはカルテが廃棄されてしまったり病院自体が廃院している場合があり、この場合には他の客観的資料(診断書、領収書、健康保険の給付記録等)により、初診日を証明するか、2番目、3番目またはそれ以降に受診した病院のカルテに初診時の受診のいきさつ(初診の病院名や日付)が記載されている場合には2番目、3番目またはそれ以降に受診した病院の受診状況等証明書によって初診日を特定することが可能となります。
脳脊髄液減少症の場合、傷病のきっかけが交通事故の場合は交通事故によって初めて病院を受診した日が初診日となります。
保険料の納付要件
特定された初診日を基準にして初診日がある月の前々月までの被保険者期間の3分の2以上の保険料を支払っている(免除を受けている)か65歳未満で初診日のある月の前々月までの直近の1年間に保険料の未納がない場合には保険料の納付要件を満たしているといえます。
障害認定基準に該当する病状
下記の障害認定基準によって定められた病状に該当する場合に障害年金を受給できます。
障害認定基準
1級・・・身体の機能の障害または長期にわたる安静を必要とする病状が日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のものする。
この日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度とは他人の介助を受けなければほとんど自分の用を弁ずることができない程度のものである。
例えば身の回りのことは辛うじてできるが、それ以上の活動はできないものまた行ってはいけないもの。
すなわち病院内の生活で言えば、活動の範囲が概ねベッド周辺に限られるものであり、家庭内の生活で言えば活動の範囲が概ね就床室内に限られるものである
2級・・・身体の機能の障害または長期にわたる安静を必要とする病状が日常生活が著しい制限を受けるかをまたは日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものとする。
この日常生活が著しい制限を受けるかまたは日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度とは必ずしも他人の助けを借りる必要はないが、日常生活は極めて困難で労働により収入を得ることができない程度のもので、例えば家庭内の極めて温和な活動(軽食作り、下着程度の洗濯等)はできるが、それ以上の活動はできないものまたは行ってはいけないもの。
すなわち、病院内の生活でいえば、活動の範囲が概ねに病棟内限られるものであり、家庭内の生活で言えば、活動の範囲が概ね家屋内に限られるものである。
3級・・・労働が著しい制限を受けるかまたは労働に著しい制限を加えることを必要とする程度のものとする。
また「傷病が治らないもの」にあっては労働が制限を受けるかまたは労働に制限を加えることを必要とする程度のものとする。
(「傷病が治らないもの」については、障害手当金に該当する程度の障害の状態がある場合であっても3級に該当する)。
障害手当金・・・「傷病が治ったもの」であって労働が制限を受けるかまたは労働に制限を加えることを必要とする程度のものとする 国年令・厚生年金令・障害認定基準より
診断書の重要性
脳脊髄液減少症の障害状態について使用する診断書は「肢体の障害用・様式第120号の3」の診断書用紙を用います。
診断書の⑱「日常生活における動作の障害の程度」欄には手足の動作の障害がある場合はその程度を現在の病状に合わせて正確に記載する必要があります。
診断書㉑「その他の精神身体の障害の状態」欄に日中(起床から就寝までの間)の臥位(横になる)の時間を必ず記載しなければなりません。
脳脊髄液減少症の場合、横になることによって症状が軽減される傾向にあることから横になっている時間によって病状を判断するためとも思われます。
更に㉑欄には日常生活や労働が脳脊髄液減少症によってどのように支障が生じているかについて必ず記載します。