自閉症は障害年金の受給対象となる傷病(障害)の一つです。
自閉症は脳の発達が疎外される先天的な病気です全ての子供の内、0.1%から0.2%に発症すると言われています。
自閉症により障害年金を受給するためのポイントを解説いたします。
目次
自閉症とは
自閉症は先天的な中枢神経系の機能障害で3歳頃までにその症状が出ると言われています。
自閉症は生物学的要因、妊娠中の喫煙、妊娠中の喘息などが原因なのではないかといわれていますが、明確な原因はまだ分かっていません。
自閉症の症状はコミュニケーション能力の欠如、言語の発達の遅れ、反復的な行動、こだわりが強く興味の対象が狭い(他の事項への無関心)、奇声を発する、ストレスを受けた場合の他害行為などがある一方、数字などの記憶力が高いなどの特徴があります。
自閉症(自閉症スペクトラム)は注意欠如多動性障害( ADHD )、アスペルガー症候群とともに広汎性発達障害の一つとされています。
自閉症による障害年金の受給
自閉症の初診日
知的障害との違い
障害年金の手続きにおいて、初診日を特定することは大変重要な事項といえます。
初診日は当該病気によって初めて病院を受診した日をいいます。
自閉症は知的障害と同様に先天的な病気です。知的障害の場合には誕生日(生まれた日)が一律に初診日とされます。
一方で、自閉症の場合は知的障害と同様に先天的な病気ではありますが、成人してから初めて病院を受診し病気が発覚することがあるため、原則通り初めて医師の診断を受けた日が初診日となります。
初診日の特定方法の原則
一般的には初診日は受診状況等証明書(初診日の証明書)を初診日の病院に作成してもらうか、初診日から継続して現在まで同じ病院を受診している場合には診断書の初診日の欄に初診日が日付を記載してもらいます。
カルテが廃棄されたり病院自体が廃院している場合
初めて病院を受診した日より現在まで長期間経過している場合には、初診時のカルテが廃棄されていたり、初診日の病院が廃院してしまい初診日の特定が難しくなってしまう場合があります。
カルテが廃棄されたり病院自体が廃院している場合には他の客観的な資料(診察券等)により初診日を特定する必要があります。
または初診日が20歳前の場合には「初診日に関する第三者からの申立書」を提出することで初診日を特定することも可能です。
自閉症と他の精神疾患が併発している場合の初診日
自閉症を発症後にうつ病を発症した場合には自閉症とうつ病は同一疾病とみなされ、初めて自閉症で病院を受診した日が初診日となります。
自閉症を発症後神経症で精神病と同様の病態を示している場合には両者は同一疾病とみなされ自閉症で初めて病院を受診した日が初診日となります。
知的障害と自閉症が併発している場合には知的障害が障害厚生年金3級に該当する程度以上の病状の場合には知的障害と自閉症は同一疾病とみなされ知的障害の初診日(生まれた日)が初診日となります。
一方で、知的障害が障害厚生年金3級に該当しない軽度の病状の場合には知的障害と自閉症は別々の疾患とみなされ自閉症で初めて病院を受診した日が自閉症の初診日となります。
自閉症の障害認定日
障害認定日とは障害の病状を特定する日で原則としてこの日以降に障害年金の手続きを行うことが可能となります。
障害認定日は原則として初診日から1年6ヶ月後の日を言いますが初診日から1年6ヶ月を経過する前に20歳の誕生日が到来する場合は20歳の誕生日(正確には20歳の誕生日の前日)が障害認定日となり、その日以降に障害年金の手続きを行うことができます。
一方初診日から1年6ヶ月後の日が20歳の誕生日以降に到来する場合は原則通り初診日から1年6ヶ月後の日が障害認定日となります。
自閉症の障害認定基準
自閉症により障害年金を受給するためには病状が障害認定基準に該当している必要があります。
初診日が20歳前にあり、厚生年金に加入していた場合以外は国民年金から障害基礎年金が支給されます。
障害基礎年金には1級と2級しかないため2級以上の病状に該当しない場合には障害年金を受給することができません。
障害認定基準
自閉症については知能指数が高くても社会行動やコミュニケーション能力の障害により、対人関係や意思疎通を円滑に行うことができないために日常生活に著しい制限を受けることに着目し認定を行う。
また自閉症とその他認定の対象となる精神疾患が併存しているときは併合(加重)認定の取り扱いは行わず、諸症状を総合的に判断して認定する。
1級・・・自閉症により社会性やコミュニケーション能力が欠如しており、かつ著しく不適用の行動が見られるため、日常生活への適用が困難でに常時援助を必要とするもの
2級・・・自閉症により社会性やコミュニケーション能力が乏しくかつ不適用な行動が見られるため、日常生活への適用にあたって援助が必要なもの
3級・・・自閉症により社会性やコミニュケーション能力が不十分でかつ社会行動に問題があるため、労働が著しい制限を受けるもの 国民年金法施行令・厚生年金法施行令別表
最も重要な担当医師が作成する診断書
診断書の依頼方法
自閉症により障害年金を請求するにあたり最も重要な書類は担当医師が作成する診断書です。
一方で、担当医師は患者と生活をともにしているわけではありませんので時として患者の病状を十全には理解していない場合があります。
このため、担当医師に診断書の作成を依頼する際は日常生活や就労にいかに支障が生じているのかと言った点を文章などにまとめ担当医師に手渡すような工夫が必要です。
診断書の重要項目
診断書の内容はどの項目も重要ではありますが、特に裏面の「日常生活能力の判定」の項目と「日常生活能力の程度」の二つの項目は特に重要な項目と言えます。
日常生活能力の判定は(1)適切な食事(2)身辺の清潔保持(3)金銭管理と買い物(4)通院と服薬(5)他人との意思伝達及び対人関係(6)身辺の安全保持及び危機対応(7)社会性の7項目に別れています。
自閉症による障害年金の請求においては、特に(5)他人との意思伝達及び対人関係の項目や(7)社会性に問題がある場合が多いと思いますので、この点についての診断書の記載が重要であると思われます。
また、対人関係の不全やコミュニケーション能力の欠如等によりその他の項目も行うことが難しい場合は現状を担当医師に記載してもう必要があります。
また日常生活能力の判定に関しては(1)から(5)のどれを選択するされることになります。
(1)が選択された場合は障害年金の受給は、難しくなります。
また(5)が選択された場合には、障害年金1級または2級に認定される可能性があります。(2)から(4)の場合は障害年金2級または3級に認定される可能性があります。
※(5)と担当医師に判断された場合でも他の項目を総合的に審査され1級と認定されない場合も多くあります。
病歴就労状況等申立書
診断書以外にもご自身で作成する病歴就労状況等申立書も重要な書類の一つといえます。
診断書が障害認定日や現在の病状を記載する「点」の役割を果たすとすれば病歴就労状況等申立書は出生から現在までの病状や就労状況などを表す「線」の役割を果たします。
自閉症の場合には先天的な傷病のため出生から記載を始める必要があります。
また病歴就労状況等申立書には経済的に困窮していると言った病歴や就労状況と関係のないことは記載すべきではありません。