肥大型心筋症は心室の心筋が厚くなることで心臓内部の空間が無くなりこのことにより血液が十分に送り出せなくなる疾病です。
肥大型心筋症はその病状により障害年金を受給できる疾患です。
目次
肥大型心筋症とは
症状
運動時の動悸、息切れ、胸痛などの症状があります。また、病状が悪化しても症状が出ない場合も多く症状が出ないまま突然死する場合もあります。
また拡張相肥大型心筋症に移行した場合は特に呼吸困難、動悸などの症状が出ます。
原因
原因はまだ良く判っていません。遺伝子の変異が原因ではないかと言われています。
肥大型心筋症による障害年金の受給
肥大型心筋症により障害年金を受給するためには一般的な障害年金の受給要件を満たす必要があります(受給資格)。
障害年金の受給要件を満たすためには初診日を特定し、特定された初診日を基準に保険料の納付要件を満たし、病状が障害認定基準によって定められた等級に該当している必要があります。
障害認定基準の等級に該当する病状
障害年金を受給するためには病状が障害認定基準によって定められた等級に該当する必要があります。
障害認定基準
肥大型心筋症による障害年金の審査は下記の【異常検査所見】【一般状態区分表】【NYHA分類】を基準に判断されます。
【異常検査所見】
A.安静時の心電図において0.2mV以上のSTの低下もしくは0.5mV以上の深い陰波T波(aVR誘導を除く)の所見のあるもの。
B.負荷心電図(6Mets未満相当)等で明らかな心筋虚血所見があるもの
C.胸部 X 線上で心胸郭係数60%以上または明らかな肺静脈性うっ血所見や間質性肺水腫のあるもの
D.心エコー図で中等度以上の左室肥大と心拡大、弁膜症、収縮能の低下、拡張能の制限、先天性異常のあるもの
E.心電図で重症な頻脈性または徐脈性不整脈所見のあるもの
F.左室駆出率(EF)40%以下のもの
G.BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)が、200pg/mL相当を超えるもの
H.重症冠動脈狭窄病変で左幹部に50%以上の狭窄、或いは3本の主要冠動脈に75%以上の狭窄を認めるもの
I.心電図で陳旧性心筋梗塞所見があり、かつ今日まで狭心症状を有するもの
【一般状態区分表】
ア.無症状で社会活動ができ制限を受けることなく発病前と同等に振る舞えるもの。
イ.軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの。例えば軽い家事・事務など
ウ.歩行や身の回りのことはできるが時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの。
エ.身の回りのある程度のことはできるがしばしば介助が必要で、日中の50%以上は就床しており自力では屋外への外出がほぼ不可能なもの。
オ.身の回りのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ活動の範囲が概ねベッド周辺に限られるもの。
【NYHA分類】
NYHA分類はニューヨーク心臓協会が定めた心不全の症状の程度の分類であり、以下のように心不全の重症度を4種類に分類するものである。
Ⅰ度・・・心疾患があるが症状はなく通常の生活は制限されないもの。
Ⅱ度・・・心疾患患者で日常生活が軽度から中等度に制限されるもの。安静時には無症状だが、普通の行動で疲労、動悸、呼吸困難、狭心痛を生じるもの。
Ⅲ度・・・心疾患患者で日常生活が高度に制限されるもの。安静時は無症状だが、平地の歩行や日常生活以下の労作によっても症状が生じる。
Ⅳ度・・・心疾患患者で非常に軽度の活動でも何らかの症状を生ずる。安静時に於いても心不全・狭心症症状を生じることもある。
【障害認定基準】
1級・・・障害が重篤で安静時においても心不全の症状(NYHA心機能分類クラスⅣ)を有し、かつ、一般状態区分表 の(オ)に該当するもの
2級・・・①異常検査所見のFに加えて病状をあらわす臨床所見が5つ以上あり、かつ一般状態区分表の(ウ)または (エ)に該当するもの
②異常検査所見の A、B、C、D、Eのうち二つ以上の所見かつ、心不全の病状を表す臨床所見が5つ以上ありかつ一般状態区分表の(ウ)又は(エ)に該当するもの
3級・・・①EF値が50%以下を示し病状を表す臨床所見が二つ以上ありかつ一般状態区分表の(イ)又は(ウ)に該当するもの
②異常検査所見のうちA、B、C、D、E、Gのうち1つ以上の所見、かつ、心不全の病状を表す臨床所見が2つ以上ありかつ一般状態区分表の(イ)又は(ウ)に該当するもの
※肥大型心筋症は心室の収縮は良好に保たれるが、心筋肥大による心室拡張機能障害や左室流出路狭窄に伴う左室流出路圧較差などが病態の基本となっている。
従って、EF値が障害認定にあたり参考とならないことが多く、臨床所見や心電図所見、胸部エックス線検査、心臓エコー検査所見なども参考として総合的に障害等級を判断する。
国民年金・厚生年金法別表(認定要領)より