じん肺は粉じんや土ぼこり、鉱物性の粉じんなどを長期間吸い込まなければならない環境で就労などを行っていた場合に大量の粉じんを吸入することで発症する疾病です。
じん肺もその病状により障害年金の対象となります。
目次
じん肺とは
原因
土ほこりや金属粒などを長期間大量に吸い込むことが原因で発症します。
症状
咳、痰、息切れなどの症状があります。
症状が進むと呼吸困難や動悸を起こすこともあり、また結核、肺がんなどの合併症に発展することもあります。
じん肺による障害年金の受給
じん肺により障害年金を受給するためには他の傷病と同じように障害年金の受給要件を満たす必要があります(受給資格)。
受給要件を満たすためには初診日を特定し特定された初診日を基準に保険料の納付要件を満たし、さらに、病状が障害認定基準に定められた等級に該当する病状である必要があります。
初診日の特定
初診日を特定することは障害年金の手続きにおいて大変重要な作業となります。
初診日を特定することで国民年金と厚生年金のどちらから年金が支給されるかが決まります。
また、保険料の納付要件も特定された初診日を基準に判断されます。
原則として初診日とは当該ご病気で初めて医師の診断を受けた日を言いますが、じん肺症の場合には例外として「じん肺と診断された日(病名が決まった日)が初診日となります。
一般的に初診日は初診時に受診した病院(自じん肺の場合はじん肺と診断された病院)に受診状況等証明書(初診日の証明書)を作成してもらうことで行います。
一方で初診時から現在まで長期間経過しておりカルテが廃棄されてしまっていたり病院自体が廃院しておりカルテに基づいて受診状況等証明書を作成してもらえない場合があります。
この場合には他の客観的資料(診察券、健康保険の給付記録など)によって初診日を証明するか、または2番目、3番目またはそれ以降に受診した病院に初診時のいきさつ(病院名や初診日の日付など)がカルテ残ってる場合にはそれに基づいて受診状況等証明書を作成してもらうことで初診日の特定を行うことができます。
保険料の納付要件
特定された初診日を基準に初診日のある月の前々月までの被保険者期間の3分の2以上の期間の国民年金保険料を支払っている(免状を受けている)か、65歳未満で直近の1年間に保険料の未納がない場合、保険料の納付要件を満たすこととなります。
障害認定基準に該当する病状
じん肺によって障害年金を受給するためにはじん肺の病状が障害認定基準に定められた等級に該当する必要があります。
じん肺の障害認定基準としては下記の【病状判定】と【じん肺X線写真像の分類(区分)】によって行われます。
一般的には高度の安静が必要で常時介助が必要な病状が1級、日常生活に著しい支障が生じている場合が2級、労働に支障が生じている場合が3級に認定される可能性があると言えます。
また、3級は障害厚生年金にしかありませんので、初診日の段階で厚生年金に加入していなかった場合(国民年金に加入していた場合)は3級(障害厚生年金3級)を受給することはできません。
【病状判定】
1級・・・胸部X線所見がじん肺法の分類の第4型であり大陰影の大きさが1側の肺野の1/3以上のもので、かつ、長期にわたる高度の安静と常時の介護を必要とするもの。
2級・・・胸部X線所見がじん肺法の分類の第4型であり大陰影の大きさが1側の肺野の1/3以上のもので、かつ、日常生活が著しい制限を受けるかまたは日常生活に著しい制限を加えることを必要とするもの
3級・・・胸部X線所見がじん肺法の分類の第3型のもので、かつ、労働が制限を受けるかまたは労働に制限を加えることを必要とするもの
【じん肺X線写真像の(じん肺法)分類(区分)】
第1型・・・両肺野にじん肺による粒状影又は不整形陰影が少数あり、かつ、じん肺による大陰影がないと認められるもの
第2型・・・両肺野にじん肺による粒状影又は不整形陰影が多数あり、かつ、じん肺による大陰影がないと認められるもの
第3型・・・両肺野にじん肺による粒状影又は不整形陰影が極めて多数あり、かつ、じん肺による大陰影がないと認められるもの
第4型・・・じん肺による大陰影があると認められるもの
じん肺による障害年金の手続きの診断書
じん肺による手続きの診断書は「呼吸器疾患の障害・様式第120号の5」の診断書用紙を用います。
診断書の内容の内、じん肺の場合表面の障害の状態欄の⑩欄「共通項目」記載するだけではなく、裏面の⑫欄に「じん肺」の記載欄がありますのでこの部分に1-「じん肺法X線写真区分」、2-「じん肺管理区分」を記載します。
病歴就労状況等申立書の作成
じん肺により手続きを行う場合には病歴就労状況等申立書を作成しなければなりません。
病歴就労状況等申立書には発病以前のじん肺になってしまった原因と思われる就労状況等(粉じんを大量に吸引してしまった原因となった職場環境など)についてもできるだけ初診日以前の欄に詳細に記載する必要があります。
またその後、じん肺が日常生活や就労にどのように支障が生じているのかといった点について記載するとともに、通院の頻度、入院期間がある場合にはその期間、治療の内容、医師から指示された事項がある場合はその内容、転院した場合はその理由、受診していない期間がある場合にはその旨及びその理由について記載する必要があります。