気分変調症はうつ病とよく似た症状を示す精神疾患で病状により障害年金の対象となります。
気分変調症による障害年金の請求手続きについてご説明いたします。
目次
気分変調症とは
気分変調症はうつ病と似た症状を示す精神疾患で以前は抑うつ神経症と呼ばれていたこともありました。
症状
気分変調症の症状はうつ病と酷似しており抑うつ状態、食欲不振、不眠、倦怠感、自尊心の低下、集中力・判断力の低下、絶望感などの症状があります。
また午前中よりも午後の病状が悪化する傾向にありまた、病状が長期間改善しない場合が多い特徴があります。
以前は気分変調症は疾病ではなく性格の問題と捉えられた時期もありましたが現在はうつ病と同じ精神疾患とされています。
原因
気分変調症の原因はうつ病とは異なると言う説とうつ病と同じと考える説がありますがまだ良く判っていません。
気分変調症による障害年金の受給
気分変調症により障害年金の手続きを行う場合に注意しなければならない点は①審査の段階で気分変調症がうつ病よりも病状が軽いと判断される場合がある事、②発症から長期間病状が改善しないまま経過する場合があることを挙げる事が出来ます。
気分変調症による障害年金の受給資格の有無について検討するに当たっても上記の点に注意する必要があります。
気分変調症により障害年金を受給するためには初診日を特定し、特定された初診日を基準に保険料の納付要件を満たしたさらに病状が障害認定基準に定められた等級に該当する必要があります。
初診日の特定
障害年金の手続きを行うに当たって初診日を特定する作業は大変重要な作業と言えます。
そもそも初診日が特定されない場合は障害年金を受給することはできません。
初診日とは当該ご病気によって初めて医師の診察を受けた日をいいます。
気分変調症の場合は気分変調症と診断された日ではなく、体調不良のため初めて病院を受診した日が初診日となります。
このため、例えば不眠で最寄りの内科を受診し、その後、心療内科を受診し気分変調症と診断された場合は初めて不眠で最寄りの内科を受診した日が初診日となります。
一般的に初診日の特定は初めて受診した病院に受診状況等証明書(初診日の証明書)を作成してもらうことで行います。
一方で、気分変調症の場合、初めて受診してから現在まで長期間が経過してしまう場合があり、カルテの保存期間(5年間)を経過してしまい、カルテが廃棄されてしまったり病院自体が廃院してしまう場合があります。
この場合には2番目、3番目に受診した病院を確認しその病院のカルテに初診時の記録がある場合にはその記録(初診の病院名や日付等)に基づいて受診状況等証明書を作成してもらうことで初診日の特定を行うことができます。
保険料の納付要件
気分変調症による障害年金を受給するためには保険料の納付要件を満たす必要があります。保険料の納付要件は特定された初診日を基準に初診日の含まれる月の前々月までの被保険者期間の3分の2以上の保険料を支払ってい(免除を受けている)か、65歳未満で直近の1年間に保険料の未納がない場合に保険料の納付要件を満たします。
病状が障害認定基準に定められた等級に該当する
障害基礎年金と障害厚生年金の違い
障害年金を受給するためには病状が障害認定基準に定められた等級に該当する必要があります。
等級は1級から3級と障害手当金の4段階に分かれています。
このうち、障害厚生年金には1級~3級と障害手当金がありますが障害基礎年金には1級と2級しかないため2級以上の病状が該当しない場合には、障害年金を受給できない場合があります。
気分変調症は、審査の段階でうつ病よりも病状が軽いと判断される場合があり、初診日に国民年金に加入していて、障害基礎年金の対象となる場合には病状が2級に該当しないと判断され、障害年金の受給が難しくなる場合があります。
障害認定基準
1級・・・日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの
2級・・・日常生活が著しい制限を受けるかまたは日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの
3級・・・労働が著しい制限を受けるかまたは労働に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの及び労働が制限を受けるかまたは労働に制限を加えることを必要とする程度のもの 障害認定基準より
担当医師が作成する診断書の重要性
気分障害により障害年金を請求する場合、担当医師が作成する診断書は、最も重要な書類といえます。
特に診断書の裏面の「日常生活能力の判定」及び「日常生活能力の程度」の判断は障害年金の受給を左右すると言っても過言ではありません。
「日常生活能力の判定」
(1)適切な食事・・・配膳などの準備を含めて適当な量をバランスよく摂ることができるかどうか。
(2)身辺の清潔保持・・・洗面、洗髪、入浴等の身体の衛生保持や着替え等ができるかどうか、また自室の清掃や片付けができるかどうか。
(3)金銭管理と買い物・・・金銭を独力で適切に管理し、やりくりがほぼできるかどうか。また、1人で買い物が可能であり、計画的な買い物ができるかどうか。
(4)通院と服薬・・・規則的に通院や服薬を行い病状等を主治医に伝えることができるかどうか
(5)他人との意思伝達及び対人関係・・・他人の話を聞く、自分の意思を相手に伝える、集団的行動が行えるかどうか。
(6)身辺の安全保持及び危機対応・・・事故等の危険から身を守る能力があるかどうか、通常と異なる事態となった時に他人に援助を求めるなどを含めて適正に対応することができるかどうか。
(7)社会性・・・銀行での金銭の出し入れや公共施設等の利用が1人で可能かどうか。また社会生活に必要な手続きが行えるかどうか。 精神の障害用の診断書・様式第120号の4より
※上記の日常生活上の行為を「出来る」「出来るが時に助言や指導が必要」」「援助があれば出来る」「出来ない」の4段階で医師が判断します。
担当医師は患者と生活を共にしているわけではありませんので、上記のような日常生活の行動の一つ一つについて患者が1人で行えるのかどうかについて理解していない場合があります。
このことから診断書の作成を担当医師に依頼する際には、これらの行動について支障が生じている部分についてメモ書きなどを作成して担当医師に伝えることが重要です。
「日常生活能力程度」
(1)精神障害を認めるが社会生活は普通にできる。
(2)精神障害を認め家庭内での日常生活は普通にできるが社会生活には援助が必要である。
(3)精神障害を認め、家庭内での単純な日常生活はできるが、ときに応じて援助が必要である。
(4)精神障害を認め、日常生活における身の回りのことも多くの援助が必要である
(5)精神障害を認め、身の回りのこともほとんどできないため常時の援助が必要である
※日常生活能力の程度は(1)から(5)の5段階から担当医師が判断します。
病歴就労状況等申立書の作成
気分変調症で請求する場合の記載時の注意点
病歴就労状況等申立書は自身が記載する書類として審査の結果を左右する場合がある重要な書類といえます。
病歴就労状況等申立書は発病から現在に至るまでの病状、就労状況について記載する必要があります。
気分変調症の場合はうつ病に比べ病状が軽いと判断されてしまう場合がありますので、病状や就労状況についてどの点について支障が生じているのかを詳細に記載する必要があります。
基本的な記載事項
病歴就労状況等申立書の記載事項は発病時の様子、通院期間、受診回数、入院期間、治療経過、医師から指示された事項、転院・受診中止の理由、日常生活状況や就労状況について記載する必要があります。