器質性精神障害はその病状により障害年金の受給対象となり疾病です。
器質性精神障害は疾病(脳血管疾患、神経変質疾患等)やウイルスなどにより脳が二次的に障害を受け、このことにより発生する精神障害のことを言い、日常生活や労働に支障が生じている場合は障害年金の受給が可能です。
目次
器質性精神障害とは
原因
神経変性疾患(アルツハイマー病、脊髄小脳変性症等)や脳血管障害(脳梗塞、脳出血等)、頭部外傷、感染症、膠原病などで脳が器質的に障害を受けることで発症する傷病です。
症状
器質性精神障害の症状は認知症と意識障害です。
認知症は記憶力の低下、知能の低下などの症状と共に人格変化を伴う場合もあります。
また意識障害は昏睡状態から注意力散漫といった軽度の障害まで様々です。さらに幻視、妄想などの症状が現れる場合もあります。
器質性精神障害による障害年金の受給
器質性精神障害により障害年金を受給するためには、障害年金の受給要件(受給資格)を満たす必要があります。
障害年金の受給要件を満たすためには初診日を特定し、特定された初診日を基準に保険料の納付要件を満たし、病状が障害認定基準によって定められた等級に該当する必要があります。
初診日の特定
障害年金の手続きにおいて初診日を特定する作業は大変重要な意義を有します。
初診日を特定することで、どの年金(国民年金か厚生年金)から障害年金が支給されるかが決定され、また保険料の納付要件も初診日を基準に判断されます。
障害厚生年金には3級(障害厚生年金3級)があるが障害基礎年金には2級までしかなく3級が無いなど保護に違いがあります。
一般的に初診日の特定は初診日に受診した病院に受診状況等証明書(初診日の証明書)を作成してもらうことで行います。
初診時の病院にカルテが残っていない場合(廃院している場合)には2番目、3番目またはそれ以降に受診した病院のカルテを確認し初診時の経緯が記載されている場合はその記載内容を受診状況等証明書に記載してもらうことで初診日を特定する事が出来ます。
保険料の納付要件
保険料の納付要件を満たすためには特定した初診日を基準に初診日がある月の前々月までの被保険者期間の3分の2以上の期間の国民年金保険料を支払っている(免除を受けている)か、65歳未満の場合で初診日のある月の前々月までの直近の1年間に国民年金保険料の未納がない場合に保険料の納付要件を満たすことになります。
障害認定基準の等級に該当する病状
器質性精神障害により障害年金を受給するためには病状が障害認定基準に定められた等級に該当する必要があります。
障害認定基準(認定要領)
1級・・・高度の認知症、高度の人格変化、その他の高度の精神神経症状が著明なため、常時の介護が必要なもの
2級・・・認知症、人格変化、その他の精神神経症状が著明なため、日常生活が著しい制限を受けるもの
3級・・・①認知症、人格変化は著しくないが、その他の精神神経症状があり、労働が制限を受けるもの
②認知症のため労働が著しい制限を受けるもの
障害手当金・・・認知症のため労働が制限を受けるもの
※器質障害としての巣症状については、「神経系統の障害」の認定要領により認定するものとし、その諸症状、認定時の具体的な日常生活状況等を把握して、全体像から総合的に認定する。
※日常生活能力等の判定に当たっては身体的機能及び精神的機能、特に知情意面の障害も考慮の上、社会的な適用性の程度によって判断するよう努める。
また現に仕事を従事しているものについては、その療養状況を考慮し、その仕事の種類、内容、従事している期間、就労状況及びそれらによる影響も参考とする。
国年・厚生年金令・障害認定基準(認定要領)より
担当医師の作成する診断書の重要性
診断書依頼時の注意点
障害年金の手続きにおいて、担当医師が作成する診断書は最も重要な書類です。
一方で担当医師は患者と生活をと共にしているわけではありませんので患者の日常生活や就労のどの部分に支障が生じているのかといった点について必ずしも全てを理解しているわけではありません。
このことから診断書の作成依頼を行う際には、日常生活や就労にどのように支障が生じているのかという点を担当医師に明確に伝える必要があります。
診断書作成のポイント
器質性精神障害により障害年金の手続きに使用する診断書は「精神の障害・様式第120号の4」の診断書用紙を使用します。
診断書の記載項目のうち、診断書裏面の【日常生活能力の判定】及び【日常生活能力の程度】のチェック欄は一項目でも実際よりも軽く記載されてしまった場合、そのことにより障害年金の受給の可否が左右されてしまう場合がありますので注意が必要です。
病歴就労状況等申立書の作成
障害年金の手続きの必要書類の中で診断書に次いで重要な書類の一つが自身で作成する病歴就労状況等申立書です。
器質性精神障害により障害年金の手続きを行う際は、原因となった傷病の発病から初診の様子、及び現在までの受診状況、就労状況、受診回数、入院期間、治療の経過、医師から指示された事項、転院・受診中断の理由などについて詳しく記載する必要があります。
病歴就労状況等申立書の記載の内容によって受給出来ないはずの年金が受給できるようになることはあまりありません。
一方で病歴就労状況等申立書に不適切な記載をしてしまったために受給できるはずの年金が受給できなくなってしまう場合がありますので注意が必要です。