障害年金の手続きにおいて初診日は大変重要な日になります。
障害年金のお手続きのまず初めにしなければならないことが初診日を特定することです。
初診日は保険料の納付要件を満たしているか、どの年金制度から障害年金が支給されるか、障害認定日は何時なのかの基準となるものですので、初診日が特定されない場合は障害年金を受給することが出来ません。
目次
初診日とは
初診日の意味
初診日とは障害年金の対象となる傷病について初めて医師または歯科医師の診断を受けた日を言います。
かつては健康診断で異常の数値が出て医師の診察を受けた場合などでは健康診断を受けたが初診日として扱われましたが、現在では原則通り初めて医師の診断を受け日が初診日となります。
精神疾患の初診日
鬱病などの精神疾患の場合は不眠症などで内科を受診した後に精神科に転院し鬱病と診断される場合があります。
この場合には精神科に転院した後に鬱病と診断された日が初診日となるのではなく、不眠症で内科を受診した日が初診日となります。
不眠症は鬱病の前駆症状であるから、または不眠症と鬱病には相当因果関係があるというのがこのような扱いがされる理由として考えられます。
知的障害の初診日
知的障害の初診日は生まれた時(誕生日)となります。知的障害は、先天的な疾患ですので例外として生まれた時が初診日として扱われます。
一方で同じ先天的な疾患である発達障害の場合は原則通り始めて医師の診断を受けた日が初診日となります。
発達障害の場合は知的障害と異なり、成人してから初めて自身の症状に気づいたり医師の診断を受けるケースがあることから、知的障害とは異なり原則通りの扱いとなります。
初診日によって決まること
保険料の納付要件
初診日を特定することで初診日を基準に初診日のある月の前々月までの被保険者期間の3分の2以上の保険料を支払っているか、直近の1年間保険料の未納がない場合に保険料の納付要件を満たすこととなります。
障害厚生年金と障害基礎年金
初診日を基準に初診日の時にご自身が働かれていて厚生年金に加入していた場合には障害厚生年金、働かれていなかった場合や自営業、学生の場合で国民年金に加入していた場合には障害基礎年金が支給されます。
障害認定日の決定
初診日から1年6ヶ月後の日のことを原則として障害認定日と言います。この日から障害年金の手続きを開始することが可能となります。
初診日の証明方法
受診状況等証明書
初診日は一般的には受診状況等証明書という書面によって証明します。
受診状況等証明書は障害年金の対象となるご病気で初めて診断を受けた病院に作成依頼を行います。
受診状況等証明書は、カルテに基づいて記載されなければなりませんのでカルテが残っていない場合(カルテの保存期間は5年と法定されています)には受診状況等証明書の作成が難しくなる場合があります。
初診日の病院にカルテが残っていない場合には2番目ないしは3番目(またはそれ以降)の病院に受診状況等証明書の作成を依頼し、そこに初診日の病院の受診日や受診状況、病名等が記載されている場合にはその記載によって初診日の特定(証明)が可能となる場合があります。
受診状況等証明書が添付できない申立書
カルテの保存期間が過ぎているために受診状況等証明書を入手することができない場合には「受診状況等証明書が添付できない申立書」を代わりに提出します。
年金事務所の窓口などでは「受診状況等証明書が添付できない申立書」を提出することで初診日が証明され年金が受給できるような説明を受ける場合がありますが、「受診状況等証明書が添付できない申立書」のみを提出しても初診日を証明したことにはならず、障害年金を受給することはできません。
この場合には何らかの初診日を特定できる下記のような証拠書類を提出する必要があります。
・身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳
・身体障害者手帳等の申請時の診断書
・交通事故証明書
・労災の事故証明書
・事業所の健康診断の記録
・母子健康手帳
・健康保険の給付記録(レセプト等)
・インフォームドコンセントによる医療情報サマリー
・お薬手帳、領収書、診察券(日付、診療科の分かるものがベター)
・第三者証明
この様に受診状況等証明書が添付できない申立書は受診状況等証明書以外の書類等の証拠で初診日を証明する時に同時に添付する書類の意味合いがあります。
第三者証明
第三者証明(初診日に関する第三者の申立書)はかつては初診日が20歳前にある場合にのみ認められていた書面ですが現在は、20歳以降に初診日がある場合にも認められる書面(初診日の証明方法)です。
第三者証明は三親等内の親族以外の第三者2名に初診日の日付や病院、受診状況、病状等をA4の証明書に記載してもらうことで初診日の証明が可能となります。
初診日の日付は、特定の日付でない場合にも限定された期間であれば認定される場合があります。
また初診日が20歳前の場合には、20歳前に受診したことが分かれば日付が特定していない場合にも初診日として認められます。
第三者証明はカルテが廃棄されているために受診状況等証明書が提出できない場合でかつ他の資料が何もない場合に、当時の状況を知っている第三者がいる場合には初診日を証明することができる強力な証拠資料となる場合があります。
初診日の変更の可否
初診日は前述のように保険料の納付要件の基準となったり、また障害厚生年金と障害基礎年金のどちらから支給されるかの基準となったりします。
このため、保険料の納付要件を満たしていない場合や障害等級が3級に該当する可能性がある場合には初診日がいつになるかで障害年金の受給の可否が左右される場合があります(障害基礎年金には障害等級3級がありませんので、初診日の時点で厚生年金に加入していない場合には、障害年金が受給できない場合があります)。
一方で結論を申し上げれば初診日を自身の都合によって移動することはできません。
障害年金は一般の入院保険と同じように事が起こる前に加入して一定の保険料を支払っている必要があるからです。入院保険が入院後に加入しても無意味であるのと同じことです。
ただ、自身が考えていた初診日以前に何らかの病院を受診していて、その病院が初診日として認められる場合がありますので他の受診歴がないか再確認する必要はあります。
また初診日以後病状が回復している期間が5年以上ある場合には社会的治癒が認められ初診日が変更される可能性はあります。